著者:青木奈緒
出版社: 小学館
単行本: 254ページ
発売日: 2017/2/15
本の紹介
言葉はまるで水の流れのようだと思う。
時代の中で新しく生まれる言葉があれば、使われなくなり消えたり、形を変えていく言葉がある。言葉は、人そのものだとも思う。
何気なく使う言葉がその人の暮らしそのものをよく表すことがある。
「今どきもう滅多に耳にしない、なつかしい響き」と言われるような言葉が、青木さんの中には根付いている。祖母・幸田文から受け継がれてきたくらしと共にある言葉たち。
幸田文の父は日本を代表する文豪・幸田露伴。文は早くに母を亡くし、父・露伴から家事や生活のあれこれを教育を受けている。離婚後、娘の玉を連れて実家に戻ると、文は父・露伴の身の周りのことを整えながら、自らも筆をとり文筆家となる。文の娘であり著者の母である青木玉、青木奈緒と幸田家の女性は3代にわたり、くらしをつづることを生業としている。
時代が移ろっても幸田家でいまも息づく言葉たちは、細やかな気遣いの中に豊かさとユーモアを感じるものばかり。日々のくらしとどう向き合うかということは、どう生きるかということにつながる。幸田露伴から受け継いだ心を娘たちが自分たちのくらしに反映させてきた家訓のようでもあるが、「さて、どうしよう」という時に、「うん、なんとかなる」「なるようにしかならない」と扉が開かれるようなはっとさせる言葉に背中を押される気がする。
ブックデータ
月刊「本の窓」に連載されたものを単行本化。