中学生・高校生に読んで欲しい”いじめ”を考える本

悲しいニュースが後を絶ちません。大きな問題としていくども取り上げられて、有識者が集まり最善策を立てても改善されている実感はなく、むしろ狡猾に追い込まれているようにも感じます。
大切なのは、みんなで考えること。いじめについて考えることは、自分について考えることです。物事を客観的に見る目を育てること、自分と向き合う時間を持つこと。それには、読書も役立ちます。中学生・高校生に読んで欲しい”いじめ”をテーマにした小説・本をまとめました。

本山理咲『いじめ 心の中がのぞけたら―漫画 明日がくる』

朝日中高生新聞で連載。みんなから寄せられた投稿をもとにした、みんなの本音が漫画につまっています。いじめで困っている人、いじめをやめられない人、いじめを止められない人、いろんな人の悩みを解決するヒントが見えてくる。

重松清『十字架』

”いじめ”をテーマにした小説をいくつも執筆している重松清さんの小説から、ぜひ読んで欲しいのが『十字架』映画化もされた話題作です。いじめで自殺した少年が残された人たちに残したものはなんだったのか。その苦しさは、少年が感じていた生きづらさに通じるような気がします。いじめられた少年、いじめていた少年、何もしなかった人、そして両親、読む人によって、さまざまな人の立場が見えてきます。

中園直樹『星空マウス』

自身のいじめ体験から小説を書いている中園直樹さん。小説を書くことで、いじめで苦しんでいる人たちに「それでも生きて欲しい」とメッセージを送り続けています。陰湿ないじめ体験と、いじめに立ち向かう自分を作るためにできることのヒントが込められています。またいじめをやめられない人の【いじめ依存症】についても、興味深く書かれています。

川上未映子『ヘヴン』

教室の中でいじめられている僕とコジマ。ふたりはいじめに屈することなく、立ち向かうでもなく、ありのままにいじめという状況を受け止めています。いじめている人もいじめられている人も、彼らだけのその世界は美しく歪んでいるのか。いじめをテーマにした純文学です。平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞

乙一『死にぞこないの青』

主人公のぼくは、ひょんなことから担任の先生に嫌われてしまい、クラス中からいじめを受けてしまいます。必死に耐えているぼくですが、いじめの状況を何とかしたいというぼくの思いが「何者か」を呼び寄せてしまったようです。ある日、全身傷だらけで真っ青な少年がぼくの前に現れます。ぼくはその少年に「アオ」と名付けますが…。
ホラー小説ですが、集団がいじめに向かう心理がうまく描かれえていると思います。いじめに加担する人たちは、そうしないと自分が不利になるという強迫観念があるのではないでしょうか。いじめる側は、そこをうまく利用して大勢を味方につけようとします。それはいじめる側も、集団を味方に付けなければ優位に立てないとわかっているからでしょう。人間ではない「アオ」も怖いですが、このクラスや先生の陰湿さがそれ以上に怖いと感じました。

林慧樹『いじめ 14歳のMessage』

明るい中学生の女の子がいじめにあっている友だちをかばったことで、自分が次のいじめの標的になってしまうという、著者自身の小学校の時の体験をもとに書いたこの小説です。パレットノベル大賞の最終選考で衝撃と議論を呼び起こしました。実話に近いとわかって読むと、とても心が痛くなります。「これが自分だったら…」と考えるよりも「これが自分の家族だったら…」と考えると、とても苦しくなります。

荻原浩『コールドゲーム』

かつていじめていた男が復讐のゴングを鳴らした。高校3年生の彼らの周りで中学校のクラスメイトたちが次々と謎の事件に巻き込まれていきます。犯人は、かつていじめていたトロ吉。いじめをするという行為は、人から恨みをかう行為だということを知っておくべきかもしれませんね。いじめの怖さはこうしたところにもあります。

薬丸岳『Aではない君と』

少年犯罪をテーマにしたミステリーやサスペンス作品を多く手掛ける薬丸岳さん。”いじめ”を子どもたちの遊びの延長のように考えている人もいるが、少年犯罪のもとを辿ると、子ども同士の歪んだ関係性に突き当たることも少なくない。”いじめ”は子ども同士の問題ではなく、犯罪につながる可能性があることを覚えておきたい。この物語の主人公は、殺人事件の容疑者となった少年の父親である。なにも語ろうとしない息子、それでも息子を信じたいと願う父親。やがて明かされる真実の裏側には、子どもたちが決して大人には見せない闇が深く広がっていた。

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