重松清『季節風 春』

  • 美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの春物語
  • 旅立ちとめぐり合いの12篇
  • 重松清をはじめて読む人におすすめの短編集

あらすじ

めぐりびな
孫の健やかな成長を願う義父母から雛飾りが届いた。7段飾りのその立派な雛壇を前に、わたしはかつて母に買ってもらった小さな親王飾りのひな人形に思いをはせる。
ひな人形や五月人形は、 子どもの身代わりとなり厄災を払う役割を担う から一家に1組と言われる。「めぐりびな」とは古いひな人形の供養のこと。
娘を思う母の思いに胸の熱くなる物語です。

球春
小さな町からプロ野球入りした男が、戦力外通告を受けて戻ってきた。町のヒーローになるはずだった男に、町の反応は厳しいものだった。中学3年生で野球部のキャプテンを務めるぼくは、男にチームのコーチをして欲しいと手紙を書くが…。

拝復、ポンカンにて
進学のため、夜行の寝台列車で上京するカズユキ。家を出ていくことに寂しさを感じるカズユキだが、そんな息子の思いとは裏腹にいつも通りの父と母。どこかがっかりしながら、乗り込んだ夜行列車の中でカズユキが見つけたものとは…。

島小僧
瀬戸内海に浮かぶ小さな島で生まれ育ったヒロシ、フミヤ、タカの3人は、この春高校を卒業し、島を出ていくことが決まった。喜びでいっぱいのはずの3人だが、その表情は浮かない。原因は、島の青年団『桜会』の送別会だった。

よもぎ苦いか、しょっぱいか
幼いころ父を亡くした私を、女手ひとつで育ててくれた母。男たちに交ざり土木工事の現場でたくましく働く母の苦労に感謝しながらも、まわりとは違う自分の母をどこか恥じていた。 手のひらに残る土の匂いに、ふと懐かしくよみがえる母への思い。

ジーコロ
上京したばかりの四月。期待と不安が入り交じり、寂しさの募った夜。母に電話をかけた公衆電話から回したダイヤルのジーコロという音。

さくら地蔵
子どもたちの通学路にぽつんとたたずんでいる小さなお地蔵さまがいる。毎年春になると、2月の立春から5月の立夏のあたりまで、このお地蔵様の足元には桜の花びらがピンクのじゅうたんのように飾られている。いつのころからか、桜の花びらをお供えすると交通事故から守ってくれるというさくらお地蔵の物語。

せいくらべ
お父さんが事業で失敗し、生活が一変したわたし。新しい土地、新しい家、新しい学校。引っ越し先の借家で、柱にせいくらべの傷を見つけた。不安を抱えながら、新しい生活に慣れようとする少女の小さな物語。

霧を往け
都心の駅で起こった人身事故。昼間からカップ酒を飲んでいた住所不定の男がホームに落ちた。助けに入った青年とともに、ふたりの男性が亡くなった。フリーライターのわたしは、興味から人々に顧みられることのない男の故郷を訪ねる。知らないはずの男の生のようすを、わたしは語り始める。最後には、胸が熱くなります。

お兄ちゃんの帰郷
東京の大学に進学したお兄ちゃんが、2か月足らずで帰ってきた。東京でたったひとり閉じこもり、体も心もやせ細ってしまっていた。「東京での一人暮らし」に過剰なロマンと期待を抱く父と、過剰な期待に押しつぶされそうな兄、ふたりの行方は…。

目には青葉
翠さんがウチにくる。同じ会社に勤め、時折一緒に食事をする間柄だ。自分では恋人だと思っている。その翠さんがマガツオを1尾持って、ウチに来る。浮かれる和生だったが、翠さんから思わぬ告白をされて…。

ツバメ記念日
仕事をがんばるママとパパに送る物語。

ブックデータ

文庫: 328ページ
出版社: 文藝春秋
ISBN-13: 978-4167669102
発売日: 2010/12/3

—-もくじ—-
めぐりびな/球春/拝復、ポンカンにて/島小僧/よもぎ苦いか、しょっぱいか/ジーコロ/さくら地蔵/せいくらべ/霧を往け/お兄ちゃんの帰郷/目には青葉/ツバメ記念日

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。
出版社勤務を経て、1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。学校を舞台に10代の心情を描いた小説も多く、多くの作品が映画化やドラマ化されベストセラーを生み出している。国語入試問題によく出典される作家としても、10代にお薦めしたい作家。
【主な受賞歴】
『ナイフ』坪田丈二郎文学賞受賞
『エイジ』山本周五郎賞受賞
『ビタミンF』直木賞
『十字架』吉川英治文学賞

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