中学生・高校生に読んで欲しい東日本大震災を描いた小説・ノンフィクション

東日本大震災「以降」という言葉をよく使うようになった。
言葉にしなくても、「震災以前は…」「あれ以降は…」と分けて考えることが多い。
現在わたしは、震災以前と同じような環境で暮らしている。
まったく同じような環境だが、わたし自身は、まったく別の生き物だと思う。
私だけでない。多くの人がそうだろう。
東日本大震災が私たちに大きな変化を与えたのは事実だ。直接の被災した人もそうでない人も、だれもが嘆き、戸惑い、いまも多分、迷いの中にいる。
作家たちもまた、自分たちを襲ったこの衝撃をどう受け止めていいのか迷ったに違いない。彼らは迷いを言葉と物語でつづる。そうして震災以降、多くの小説が生まれた。
その中から、おすすめをいくつか紹介します。
※この ページは随時更新しています。

小説・ノンフィクションノベル

重松清『希望の地図3.11から始まる物語』

【中学生におすすめ】

引きこもりの中学生とフリーライターの男が、復興に向かう被災地を取材し歩くノンフィクションノベル。中学校国語教科書でもおすすめしている1冊。被災地で頑張っている企業やプロジェクトのルポにもなっています。

河原れん『ナインデイズ』

【すべての人におすすめ】

2011年3月11日、これまでに経験したことのない大きな地震が東北を襲った。岩手県庁内にすぐに設置された災害対策本部。十分な燃料もない、確な情報もない。そんな中、ひとりでも多く苦しんでいる人を助けたい、と必死に救助する人たち。現地の混乱、行政の対応。震災からの激動の9日間をつづったノンフィクションノベル。これが、ただの小説だったらどんなにいいだろうと思った。

いとうせいこう『想像ラジオ』

想像ラジオ
河出書房新社
いとうせいこう

【中学生からおすすめ】

突然に日常を奪われた人たちの声を届け続けているラジオがあるという。
「海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、「想像」という電波を使ってお送りしている番組。空ー想ー像ーラジオー。パーソナリティはDJアーク。」
三島由紀夫賞をはじめ、芥川賞候補にもあがったベストセラー作品。じんわりとしみてくる。

重松清『また次の春へ』

【すべての人におすすめ】

東日本大震災で戸惑っているのは、被災者だけではない。直接被害を受けていない自分たちに何ができるのか、何を求められているのか迷ったり、当たり前の生活を送れることに後ろめたさを感じてしまったり。ついそんなことを考えちゃう人に読んでほしい短編集。そんなことは必要ないという人もいるけれど、そんな風に一緒に迷ってくれる人の存在を、あたたかいと私は思う。

天童荒太『ムーンナイト・ダイバー』

【高校生からおすすめ】禁断の海に潜り、だれかの帰りを待つ人々の元へ思い出の品を探し届ける。止まった時間の中で漂う海に眠る町へ潜り続ける舟作もまた、何かを探していた。東日本大震災から4年、天童荒太が描いた福島。なにかを諦め、いまを受け入れていく。そんな簡単にはいかない、それでも自分の生き方と向かい会おうとする人々の再生の物語。

川上弘美『神様2011』

神様 2011
講談社
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東日本大震災を受けて新たに小説を書いた作家さんは多いけれど、これまでの作品を書き直しした作家さんは、彼女だけじゃないかしら。川上弘美さんは、自身のデビュー作『神様』から『神様2011』を書き上げた。震災以前と震災以降について私たちは考えるべきことがあるということ、そして憤りと悲しみが文学を通して語られている。

沼田真佑『影裏』

東北・岩手を舞台に、釣り好きだった同僚だった男との思い出をなぞりながらすすむ回顧物語。男は、震災後行方不明となっていた。

 濱野京子『石を抱くエイリアン』

【高学年から中学生におすすめ】

これは、東日本大震災のあった年に中学三年生だった人たちの物語。阪神大震災と地下鉄サリン事件のあった年に生まれた彼ら。未来には希望がつまってると語る大人たちの声を半信半疑に、それでも明日は間違いなくやってくると疑わなかった。ふだんはあまり本を読まない人にもおすすめしたい児童書。

森絵都『漁師の愛人』

森絵都さんの短編集の中のひとつ「あの日以降」。

東京で共同生活を送っていた3人の女子。それなりに充実した毎日をなんとなく送っていたところに起こった東日本大震災。なにも変わらないはずだった生活に変化が現れる。森絵都さんは、福島での動物保護を取材したノンフィクション『おいで、一緒に行こう (文春文庫)』も出版しています。

ノンフィクション

『「あの日」のこと』

「あの日」のこと
ポプラ社
高橋 邦典

高橋邦典さんは、宮城県出身のフリージャーナリスト。東日本大震災を取材先の北アフリカで知った高橋さんは、急いで故郷・宮城へ戻りました。震災直後の方たちの「いま」をカメラにおさめ、その声を取材した写真集です。さらに一年後を取材した『「あの日」、そしてこれから』も合わせて手に取ってみてください。

『おもかげ復元師の震災絵日記』

【すべての人におすすめ】

復元納棺師とは、遺体を生前のように復元して納棺する職業です。津波で犠牲になった人のご遺体は、損傷が激しく遺族にとってその姿との対面はとてもつらいものでした。岩手県の復元納棺師・笹原留似子さんは、ボランティアでたくさんのご遺体の復元をします。残された家族の思いに寄り添う笹原さんのあたたかさ、亡くなった方と家族との別れの場面には涙が止まりません。

心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師 ~思い出が動きだす日~

【児童書・高学年から中学生におすすめ】

復元納棺師・笹原留似子さんの児童向けノンフィクションです。先ほど紹介した『おもかげ復元師の震災絵日記』と合わせて読みましたが、どちらも心を強く揺さぶられます。

復元納棺師という仕事をこの本ではじめて知った。これだけの仕事をボランティアで行うのは、誰にでもできることではないと思う。

『遺体: 震災、津波の果てに』

数日ぶりに電気が復旧し、最初に目にした報道番組で、「何千という遺体が発見されたという」情報に、「報道が間違っている」と思いました。テレビで実際の映像を見ても尚、その状況を疑うようなそれほどに信じられない規模の災害でした。一方で、報道されることのない現実もたくさんあります。突然奪われる命に残された人々はどう向き合ったのか、ノンフィクションライター石井光太さんが現地で見たルポタージュです。

『震災後の不思議な話 三陸の怪談』

震災から復興へと時間がすすむにつれて、被災地では不思議な物語がささやかれるようになりました。突然に日常を奪われた人たち魂が語りかける思いがあるような気がします。亡くなった人たちとどう向き合ってこれから新しい町を作っていくのか、震災について考えることは「死」とどう向き合うかなのではないかという気がしています。