朽木祥『あひるの手紙』

朽木祥『あひるの手紙』の表紙画像

はじめて文字を覚えた時のことを覚えているだろうか。
自分が文字を書きはじめたころのことは全く覚えていないが、子どもたちが小学校で文字を習いはじめたころのことはよく覚えている。
毎日、宿題のプリントに向き合い、
し、とか、い、とか
ていねいに、鉛筆を走らせていたのを、そばで見ていた。

文字を覚えはじめた子どもたちはよく手紙を書いてくれた。
おかあさん、いつもありがとうとか
わたしのお店に来てください、とかなんとか。
どれも楽しいものばかりだった。

文字を覚えるということは
だれかに伝える手段がひとつ増えるということだ。
ことばはだれかとだれかをつないでくれる。
ことばには力がある。

ことばを覚えることの楽しさや、ことばのもつちからを思い出させてくれるのが、この物語。

不思議な手がみ

ある日、一年生のクラスに手紙が届く。
びんせんにはたったひとこと。

あひる

それだけ。

ふうとうには「いちねんせいのみんなへ」と書いてある。

てがみの差出人は「たなかけんいち」くん

この手紙の差出人はいったいどんな人なのだろう。

ちょっとだけネタばらしをすると、この手紙の差出人は、ひらがなをぜんぶ覚えたばかりで、だれかと手紙のやりとりをしたいと思ったみたい。

さて、このふしぎなあひるの手紙に、一年生の子どもたちはどんな返事を書くのだろうか。

あなたならどうする?

このお話は、ある小学校に届いた手紙のエピソードをきっかけに生まれたそう。

ユーモアのある心あたたまる手紙のやりとり。

一年生たちとけんいちさんの手紙のやりとりはたのしくってうれしい言葉がたくさん出てくる。

もしも、じぶんならどんな返事を書くだろう、なんて考えながら読んでみるのも楽しい。

受賞歴など

第55回児童文学者協会賞
2016年ドイツのミュンヘン国際児童図書館が発行する国際推薦児童図書目録ホワイト・レイブンズに選定
朽木さんの作品は『あひるの手紙』のほかに『八月の光』『光のうつしえ 廣島ヒロシマ広島』も同目録に選定されています。ひとりの作家の作品が3つも選ばれるのは異例のこと。

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大型本:64ページ
出版社:佼成出版社
発売日: 2014/3/25

著者プロフィール

朽木祥(くつきしょう)
1957年、広島市生まれ。
【主な受賞歴など】

『かはたれ』・・・児童文学ファンタジー大賞佳作、第39回日本児童文学者協会新人賞、第35回児童文芸新人賞、第53回産経児童出版文化賞
『彼岸花はきつねのかんざし』・・・第33回日本児童文芸家協会賞受賞
『風の靴』・・・第57回産経児童出版文化賞大賞受賞
『オン・ザ・ライン』・・・全国青少年読書感想文コンクール指定図書
『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』・・・第9回福田清人賞、第63回小学館児童出版文化賞受賞
『あひるの手紙』(佼成出版社)第55回日本児童文学者協会賞受賞

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