【ブックリスト】10代に伝えたい戦争の小説~日本文学編

第二次世界大戦の終戦から75年以上が経ちました。当時のできごとを直接に経験者からうかがう機会は年々少なくなります。悲しい歴史を繰り返すことのないよう、自ら学び考える機会を持ちたいですね。中学生・高校生に手に取って欲しい戦争小説をまとめています。読書感想文にもおすすめです。

※海外小説、原爆をテーマにした小説、戦争ノンフィクションは別にまとめています。このページの一番最後に紹介しています。このページは随時、追加更新しています。

水野宗徳『さよなら、アルマ』

さよなら、アルマ (Sanctuary books)
サンクチュアリパプリッシング

【小学校高学年から大人にもおすすめ】
第二次世界大戦中に、兵士として戦場に送られた一頭の軍犬の出征写真から生まれた、心優しい青年と愛犬アルマとの心の絆を描いた、あたたかく悲しい物語。小学生向けに集英社みらい文庫版もあります。

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戦争では、立場の弱い者が犠牲になると言われます。第二次世界大戦でも、アルマのように多くの動物も戦争の犠牲となりました。彼らは、私たち人間の社会で何が起こっているのか理解できないままに、それでも、人間を信じて、身を捧げてくれたように思います。動物を愛する人たちが、動物を裏切らなければならないことの苦しみを背負わされたことが、悲しみをより深くさせます。

椋鳩十の『マヤの一生』もまた、家族と犬のマヤの悲しい結末を描いた物語です。

第二次世界大戦中、久保家にやってきた熊野犬の子犬はマヤと名づけられ、家族にかわいがられていました。戦争が激しくなるにつれて、国は贅沢を禁じ、生活にもさまざまな制限が設けられます。やがて、マヤのもとにも戦争の悲劇が訪れます。飼い犬を愛する家族の心の苦しさ、なにも知らずに家族を信頼するマヤの姿が胸に焼き付きます。小学校中学年から読めます。こちらもぜひ手に取って欲しい作品です。

『生きる 劉連仁の物語 』

【小学校高学年から中学生におすすめ】
第二次世界大戦下、日本に強制的に連行され労働させられた多くの中国人や朝鮮人がいました。劉連仁もそんなひとりです。危険で非道な強制労働から逃亡した劉連仁は、その後戦争が終わったことも知らずに13年間も逃げ続けました。実際にあった出来事を描いたノンフィクションノベルです。読書感想文課題図書にもなりました。

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戦時中の強制労働の史実を盛り込んだ児童書『霧の流れる川』も。

強制連行された方たちを描いた絵本『紅玉』も心に残る物語です。こちらは小学校高学年から中学生への読み聞かせにも。ぜひ伝えたい物語です。

紅玉
新日本出版社

あさのあつこ『花や咲く咲く』

【小学校高学年から大人にもおすすめ】
昭和18年、4人の女学生の物語。生活が逼迫し、贅沢が疎まれる中、思いがけず手に入った布地で4人はブラウスを縫いはじめる。おしゃれが好きで、笑いあう――そんな仲良し4人組にも、やがて戦争の暗い影が忍び寄り…。

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灰谷健次郎『太陽の子』

【小学校高学年から大人まで】
ほんわかとあたたかい家族のような「おきなわ亭」に集う人々。そのあたたかさや優しさの奥には、深い悲しみがあった。はじめてこの本を読んだ時、私は二十歳を過ぎていたけれど、自分がこの戦争のことを本当は何も知らないことを知らされた。児童書として書かれた作品なので、小学生から大人まですべての人におすすめです。

長江優子『ハンナの記憶I may forgive you』

【小学校高学年から中学生におすすめ】おばあちゃんに届いた外国からの手紙。地震で崩れた荷物の中から見つけた古いノートには、手紙の差出人ハンナの名前があった。親友だったおばあちゃんとハンナ、ふたりの秘密の交換日記には、おばあちゃんが語ろうとしない戦時中のできごとが記されていた。戦時中に日本に暮らしていた外国人について知ることができる物語。

野坂昭如『火垂るの墓』

【中学生から大人までおすすめ】

著者の原体験から生まれた戦争孤児の兄妹の悲しい運命を描いた物語。ジブリ作品で知っているという人も多いと思いますが、ぜひ原作も手に取ってみてください。「アメリカひじき」とともに直木賞受賞作です。ポプラポケット文庫も。

野坂昭如さんの『戦争童話集』も、小学生から読めるおはなしとしておすすめです。小学生のころに読んだことがあるという中学生や高校生にも、改めて読み直してみると、以前は気づかなかった悲しみの深さに気づくかもしれません。

藤岡陽子『晴れたらいいね』

【中学生から大人までおすすめ】看護師の紗穂は大きな地震で気を失い、目が覚めると1944年のマニラで従軍看護婦・雪野サエになっていた!戦争を知らない世代の目線から描かれた戦争体験は、現代の中高生の感覚と近く共感しながら読めるのではないでしょうか。文庫本も出ました。映画化希望のおすすめ作品です。

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 竹山道雄『ビルマの竪琴』

【中学生から大人までおすすめ】第二次世界大戦中、過酷な戦場となったビルマ(現ミャンマー)を舞台にしながら、その悲惨さを描く描写はほとんどなく、それでいて、心の中に大きな余韻を残す、心を打つ力強さと不思議なあたたかさを持つ作品。児童文学として描かれ、映画化もされた名作です。年齢問わず、一度は読んで欲しい。

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 百田直樹『永遠のゼロ』

【中学生から大人までおすすめ】

特攻隊として亡くなった祖父・宮部久蔵の生きざまをたどりながら、第二次世界大戦という戦争の軌跡をふりかえります。なにか戦争小説を読みたいという中学生・高校生には、まずこちらをおすすめします。

ゼロ戦が飛ぶシーンはカッコよかった。戦争で使われたのは残念だけど、日本はすごい技術を持っていたのだと知った。

第二次世界大戦では日本は反省面ばかりを強調されますが、世界を驚かせるほどの高度な技術を持っていたのは誇るべき点かもしれませんね。

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横山秀夫『出口のない海』

第二次世界大戦中、特攻隊と同じように二度と戻れない極秘兵器だった人間魚雷「回天」への搭乗を志願した青年を描く。

 大岡昇平『野火』

【中学生から大人まで】

飢えという 極限状態に置かれた人間模様を描きます。体も心も極限状態に追い詰める「戦争」の残酷さ。「人が人であること」について考えさせられます。

遠藤周作『海と毒薬 (新潮文庫)』では、戦争末期に行われたとされる米軍捕虜の生体解剖事件を描いています。どちらも衝撃的で重いテーマなので、読後はひきずるかもしれませんけど。高校生からどうぞ。

中脇初枝『世界の果ての子どもたち』

【中学生から大人までおすすめ】昭和20年の満州で、国籍も環境もまったく違う三人の少女は、ひょんなことから一夜を共に過ごし友情が芽生える。間もなく戦争は終結するが、三人それぞれの場所で過酷な迎えることになる。戦後の日本と中国を舞台に、彼女たちの戦後を描きます。

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