- 【BOOKS雨だれ】高校生におすすめの本!
- 奴隷制度を知り、人権について考えるノンフィクションノベル
- 読書感想文にもおすすめ世界中で読まれているベストセラー
本の紹介とレビュー
不埒な医師・フリント医師の奴隷だったリンダ。
雇い主からの耐え難い虐待から逃れるために十五歳の少女が選んだのは、他の白人男性の子どもを産むことだった。
それは高潔な道徳心に背く、大きな賭けでもあった。
彼女が欲しかったのは、ただ自由で平穏なごく当たり前の生活。
奴隷制度の真実を知らなかった北部の人たちは、そのあまりにもショッキングでセンセーショナルな内容に、この物語を「著者不明のフィクション」と位置付けた。
実際に、リンダが北部に逃げ切った時、彼女が自由を手に入れるために計画し実行したことを告白すると、牧師はこうたしなめた。
「ほかの人にあけすけに話してはなりません。心ない人が聞いたなら、あなたを軽蔑する口実にするかもしれない」
しかし、だれも頼るもののいない場所で、恐怖に打ち震えるたった15歳の少女がほかにどんな方法で「自分」を守ることができただろうか。
多くの黒人の自由と人格を奪った奴隷制度だが、物語の主人公リンダは、奴隷制の苦しみは黒人だけのものではない、と綴る。
奴隷制は黒人だけでなく、白人にとっても災いなのだ。それは、白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻をみじめにする。黒人に関しては、彼らの極度の苦しみ、人格破壊の深さを表現するには、わたしのペンの力は弱すぎる。
この物語を読めば、白人の家族もまた奴隷制度によって翻弄されていることがわかる。
ひとりの奴隷少女が手に入れた自由はやがて、奴隷制度の残忍さの真実を伝え、長い間封じ込められていた多くの奴隷たちの声を解き放つ。
これはフィクションなのか!?
この物語は、一風変わった長い歴史を持つ。
自由を手に入れたリンダは、奴隷制の真実を人々に知ってもらおうとペンを取り、物語をつづることを決意した。こうしてできあがった物語は当時、フィクションとして扱われていた。奴隷の多くは文字を書くことができない。ましてや、物語が書けるとは思われていなかった。この物語も、著者不明の(白人による)フィクション」と位置付けられた。
126年後、歴史学者によってこの物語が「リンダ・ブレントによるノンフィクション」であることが証明されると、やがてこの作品は米国でベストセラーとなった。
この物語の真実が明かされてはじめて、この物語の歴史的な価値が認められた。
ブックデータ
文庫: 343ページ
出版社: 新潮社
発売日: 2017/6/28
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