井戸まさえ『無戸籍の日本人』

いま、この日本で戸籍のない人たちが存在している。戸籍がないとは、どういうことなのだろう。無戸籍でくらす人たちのリアルな声を伝えるノンフィクションを紹介します。生きるために必要な権利や戸籍のない人たちの支援について考えてみませんか。

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戸籍のない人々

2004年に公開された映画「誰も知らない」は、母親が失踪したあと、幼い弟妹の世話をしながら懸命に生き延びようとする少年の姿を描き、数多くの映画賞を受賞した注目作である。この映画は実際に起こった悲しい事件をモチーフにしている。シングルマザーの母親は、わずかな生活費と4人の子どもに残し家を出たまま戻らなかった。ふたりの子どもが亡くなる悲しい事件となり、保護された子どもたちの中には、戸籍のない子どもがいることがわかった。それまで、無戸籍の問題が表に出ることはほとんどなかったため、この事実は社会に大きな驚きを与えた。

戸籍がない、とは尋常ではない。なんらかの事情で出生届が出されず、行政に把握されなければ、戸籍上に記録されない。戸籍のない人は「無戸籍者」「無戸籍児」と呼ばれる。その人数は正しく把握されておらず、1万人とも言われている。

生きるために必要な権利

戸籍がない、とはどういうことか。戸籍がないことで、どんな問題が生じるのだろうか。

例えば、戸籍がなければ住民票が作れない。
住民票がなければ、義務教育を受けるための通知が来ない、そのため学校に通えない。
保険証もないので、医療費は全額負担になる。そのため、治療を受けない人も多い。健康診断や予防接種も受けられない。
身分を証明するものがないから、仕事や住む場所を見つけることが困難になる。

戸籍がないことで、生きるために必要なあらゆる権利が与えられないのである。

なぜ戸籍がないのか

なぜ彼らは無戸籍者となってしまったのだろう。

ひとつには民法の問題がある。民法第772条では、離婚から300日以内に生まれた子どもは前の夫の子として見なすこととしている。そのため、この期間に出産して出生届を出すと必然的にその子どもは、前の夫の子として戸籍に登録されてしまう。この法律のために、子どもの出生届を出せずに無戸籍となってしまう子どもがいる。だれも得をしない法律という気がするが。

実は著者自身、同じ理由で思いがけず自分の子どもが無戸籍になった経験をもつ。このおかしな法律を変えようと奮闘する中で、多くの無戸籍者の声をきき、彼らの抱える問題に直面したことが、無戸籍者の支援活動を行うきっかけとなっている。

彼らの現実は現状だけで十分にドラマチックだ。戸籍を持たないという事実、親きょうだいの事情、直面する問題。さらには……。
「さらには……」
その先にはメディアでは語られない、そして思いもよらない彼らの生活のリアルがある。(本文より)

無戸籍問題の多くは法律や親の問題であり、本人たちにはなんの責任もない。戸籍がないことで生じるのは先ほど述べたような問題だけではない。戸籍がないことで抱えなければならない多くの問題を彼らは背負わされている。学校に行かなければどこで友だちを作るのだろうか。中には、自分の出生についてなにも知らない人もいる。秘密を抱えたまま生きていくのは本当に苦しい。そうした彼らの苦しい声をとなりで聴いてくれる人はいるのだろうか。戸籍上は存在しない彼らの現実から、法律の抱える問題や支援について考えてみませんか。

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無戸籍の日本人
集英社
¥1,870(2021/01/08 17:14時点)

出版社 : 集英社
発売日 : 2016/1/4
単行本 : 384ページ
ISBN-13 : 978ー4087815955

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この本の担当者
ゆう

ぶっくす雨だれの店主。
好きなこと:本を読むこと、食べること。
苦手なこと:そうじ
学校図書館あちこち。ブックカフェを開くのが夢です。

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