- 森絵都さんのシュールな短編集
- プリン三部作がおすすめ
- 震災をテーマにした「あの日以降」収録
闘いの火ぶたは落とされた、プリンによって
森絵都さんといえば『カラフル』に代表されるような児童文学作家さんのイメージをお持ちの方も多いでしょうが、センスのよい彼女の短編に心惹かれる。決められた短さの中で伝えることを伝え、物語に惹きつけてすとんと落とす。爽やかガムのようなその絶妙さが心地よい。
*もくじ*
少年とプリン
老人とアイロン
ア・ラ・モード
あの日以降
漁師の愛人
***
「少年とプリン」「老人とアイロン」「ア・ラ・モード」
かつてこれほどプリンが男たちを狂わせるものだと知らしめた物語があっただろうか。失われたプリンが行き場のない怒りを呼び起こす三部構成のショートショート。この3つはまとめて一気に読んでいただきたい。
少年たちの、ぶつけきれない大人への怒りと、その中で悶絶する姿がぴたりと描かれていて、思わずにんまりとしてしまう。がんばれ少年よ。男子におすすめ三部作。
「あの日以降」
東京で共同生活を送っていた3人女子の、東日本大震災以降の生活を描く。住むところも仕事もある。それでも、不安を抱え、何かが終わり、何かを受け入れ、新しい何かが始まる…。
「漁師の愛人」
リストラされ、実家に戻り漁師になる男と共に何もない港町に暮らす愛人・紗江。あるのは、妻の円香からの電話と愛人を拒む地元の女たちのねめつけるような視線…。
プリンシリーズ3編はショートショート。ほか2編は中編。
文庫本もありますが、単行本のこちらの表紙がお気に入り。
文庫: 190ページ
出版社: 文藝春秋
ISBN-13: 978-4167906504
発売日: 2016/7/8
著者プロフィール
森絵都(もりえと)
1968年生まれ、東京都出身。
早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。『カラフル』をはじめ、数々の児童文学を発表。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。
【主な受賞歴】
『リズム』第31回講談社児童文学新人賞
『カラフル』第46回産経児童出版文化賞
『風に舞いあがるビニールシート』第135回直木賞
『みかづき』第12回中央公論文芸賞