『沈みかけの船より、愛をこめて』~ 乙一、中田永一、山白朝子アンソロジー第二弾

乙一、中田永一、山白朝子「沈みかけの船より、愛をこめて 」POP

映画監督・安達寛高監修、著者・乙一、中田永一、山白朝子によるひとり短編アンソロジー第二弾。ミステリー、ホラー、青春小説とジャンルわけできない全11編の短編集。

大好きな作家さんの共演?競演?いや狂宴か?ともかく、ずっと乙一さんを追いかけているファンにはたまらない、ご褒美的短編集。

ひと作品づつ、じっくりと味わいました。大満足。

ファンと豪語するからには、初読作品で作者を当てたい!と意気込み、もくじを開かずに読み進めるが、「五分間の永遠」の著者を中田永一と出だしから読み外し。あとは、だいたい予想通りでした。

すべて読み終えて、人におすすめするなら中田永一さん、わたしのお気に入りはやはり「乙一」さん‼︎

みなさんもぜひ、著者当てを楽しみながらどうぞ〜ということで、もくじもタイトルのみ紹介としますね。

この短編集に、乙一さんから私たち読者へのメッセージが隠されているとしたら、やはりこの一文かもしれない。

いつも、たぶんこれからも、私には同じ船に乗り合わせた彼らに対しての、揺るぎない愛があるだろう。

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本の紹介

以下、かんたんな作品紹介。

五分間の永遠
クラスでいつもひとりぼっち、友だちのいない村田ツトムから、五分間だけ友だちのふりをして欲しいと頼まれたおれは、500円の報酬で引き受けるのだが…。時間をテーマにした児童書アンソロジー用の一本。

無人島と一冊の本
漂流した船乗りの男が流れ着いたのは、猿たちが暮らす無人島。傍らには一冊の百科事典。星新一のショートショートのようなSF的展開が楽しめる。

パン、買ってこい
クラスメイトの入間は不良である。入間に「パン買ってこい」と言われた僕は、入間のためにパンを買いに走る。スポーツ雑誌用に「走る」をテーマに執筆した作品。
パシリにされるという切なさを、春風のわうな爽やかなあたたかさに変えてしまう中田永一さんの青春小説の凄さよ。

電話が逃げていく
電話が滑る!生きているみたいに手から逃げる!どうしたらいいのー⁉︎という、これはコメディではなく、ミステリー、いやホラーか。

東京
地方を離れて、東京暮らしをしている女性は、覚えのない子を宿す。そうして生まれた子とのかけがえのない日々の物語。ものすごくよかった作品。読み手によって感想はまちまちかもしれない。

蟹喰丸
余命半年と言われた男、酒を飲み歩き回り、気づくと見覚えのない森の中に迷い込んでいた。そこで無類の酒好きな鬼と出会う。酒をテーマに寄稿された作品。

背景の人々
エキストラのバイトで、山奥での撮影に参加した時の不思議な物語。雑誌で百物語の企画のために書かれた作品。

カー・オブ・ザ・デッド
山道をひとり走行していた日比谷は、前方不注意で男を轢いてしまう。なんとその男はゾンビだった。
このアンソロジーの中で一番楽しんだ作品。近年ゾンビブームだが、中でもゾンビコメディはお気に入りジャンル。ラストか乙一さんらしい。

地球に磔(はりつけ)にされた男
タイムマシンが登場するSF小説。父の友人である実相寺が亡くなり、遺産の一部を譲り受けることになった柳廉太郎は、「時間跳躍機構」を見つける。十年という時間をテーマにしたアンソロジーのための作品。

沈みかけの船より、愛をこめて
離婚することになった父と母、わたしと弟は期限までにどっちについていくか決めることに。「迷う・惑う」をテーマにしたアンソロジーのための1本。物語はとてもシンプルだけど、そこにある迷いや葛藤は複雑で大きい。ラストのひと段落が、胸にぐんと迫る。

二つの顔と表面 Two faces and surface
孤独な少女と彼女の皮膚に現われた人面痕の物語。ホラーでありミステリーであり、コミカルでいてきゅっと胸を掴まれる。乙一さんの好きなところが詰まっている作品。

本をチェックする

乙一ファンはもちろん、まだ乙一を知らない人にもおすすめ。
朝読書にもいいかもね。

沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション
朝日新聞出版
乙一、中田永一、山白朝子 (著)

出版社 ‏ : ‎ 朝日新聞出版
発売日 ‏ : ‎ 2022/5/20
単行本 ‏ : ‎ 352ページ

【もくじ】
五分間の永遠/無人島と一冊の本/パン、買ってこい/電話が逃げていく/東京/蟹喰丸/背景の人々/カー・オブ・ザ・デッド/地球に磔にされた男/沈みかけの船より、愛をこめて/二つの顔と表面

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