森絵都『カラフル』~この世界は色で満ちている

森絵都『カラフル』
  • BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊
  • 第46回産経児童出版文化賞受賞
  • アニメ映画が文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
  • 朝読書・読書感想文にもおすすめ

なにか本を読みたいけれど、どれを読んだらいいのかわからないという中学生におすすめしたいのが森絵都さんの『カラフル』。

森絵都さんの作品には、『リズム』『宇宙のみなしご』『つきのふね』など中学生の女の子を主人公にしたものが多いが、『カラフル』は男女問わず人気がある。

『カラフル』は1998年の刊行以来20年以上、多くの中学生たちに読まれてきたロングセラー小説。現代日本文学の殿堂書とも言える。次々に新しい小説が刊行される昨今、3年後にはもう「古い」と感じる小説も少なくない中で、流行に敏感な10代にこれほど長く読み続けられているのは、ストーリーの面白さだけでなく、彼らの心をとらえる普遍的なテーマがこの小説に強く含まれているからといえる。

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あらすじ

「おめでとうございます、抽選にあたりました!」

死んだはずのぼくの魂の行く手をさえぎり、突然現れた天使が言った。

前世で大きな過ちを犯したぼくに訪れた、輪廻転生のチャンス。それは、自殺した中学生・小林真の体に「ホームステイ」して、自分がおかした「罪」を思い出すことだった。

小林真が生き返り喜ぶ父と母。しかし、間もなくぼくは小林真をとりまく不運な人生が見えてくる。家族も友人も進路も、小林真の人生にはいいことなんてひとつもない。

「ぼく」がホームステイした小林真の人生は救われるのか!?そしてぼくは、自分の「罪」を思い出して、再び輪廻転生のサイクルに戻ることができるのか!?

人生はやりなおせるのか

この小説のおもしろいところは、主人公が死んでしまうところから物語がはじまるところ。死んでいるというのに「おめでとうございます」という能天気なセリフまで登場する。自殺した中学生「小林真」の体にホームステイして、自分が犯した「罪」を思い出すことができれば、再び輪廻転生のサイクルに戻ることができるのだと、プラプラと名乗る「天使」が言うが、それもなんだかよくわからない。辞退しようとした「ぼく」だが、どうやら断ることができないシステムらしい。せっかく、もう一度生き返るチャンスだというのに、辞退しようとするところが「ぼく」の弱気さが表れているが…。

現実的に考えたら、人生はやり直しができない。

死んだら終わり。

1回きりと決まっている。

やり直しのできる人生なんてファンタジーだ。

そんな風に思う現実主義者のみなさんにこそ、この物語をおすすめしたい。物語のはじまりこそファンタジーだが、生き返った小林真の人生は現実そのものだ。

「小林真」として中学生活を送ることになった「ぼく」は、やがて小林真の人生の「現実」を知ることになる。小林真の人生は「今となっては、なんで真がこれまで生きてこられたのかふしぎなくらい」だとぼくに同情されるほど、小林真の人生はついていないことばかり。死んだ人に同情されるなんて小林真もちょっとかわいそうだけど。自殺に追い込まれるくらい、人生に絶望していたのだろうからね。

プラプラの言葉を借りるなら「ハワイのような楽園ではない」ってこと。人生がハワイのような楽園だと感じている中学生がいたら、何の失敗も悩みもなく、よほど充実した毎日を送っている人だけだろうけど。

ともかく、ぼくはもう一度生まれるために、「小林真」として家族や友人と関わり合い、生きる道を探していく。小林真の人生はいいことなんてひとつもないように見えるけれど、見方を少し変えただけで、人生は全く違った方向に進むこともある。

人生をやり直したい、と思うことは誰にでもある。いまの自分を捨てて別の誰かのような人生を送りたい。だが、別の誰かになれたら、今よりもよい人生が送れるという保証はどこにもない。それなら、生まれ変わることに意味なんてあるのだろうか。「生まれ変わる」には、輪廻転生のほかに「新しい自分になる」という意味もある。

ファンタジーじゃなくったってやり直しはいつでもできる、それは現実だ。自分が思ってるほど、自分の人生も悪くないと思えたら上々。

読みどころ

①中学生ならだれもがぶつかる壁や悩みを描く

小林真は中学3年生。家族のこと、友人のこと、そして進路のこと、さまざまな悩みを抱えています。繊細で少し傷つきやすい少年・小林真に自分を重ねたり、共感できるという中学生も多いのではないでしょうか。

②リアルなのにコミカルで読みやすい

家族や友人の悩みを抱えて死を選んでしまうことは、とても重い内容です。森絵都さんは、あえてコミカルに描いています。

「ぼく」目線から「小林真」の人生を追体験するおもしろさも味わえます。普段あまり本を読まない人でもすんなりと小林真になりきれるのは、森絵都さんという作家の筆力のなせる業ですね。

③現実と非現実のあいだを描くファンタジーな展開

一度死んだぼくがほかの人の体にホームステイして中学生の生活を体験する、という非現実的な設定なのに、小林真の毎日ときたら嫌になるくらいに現実的だというギャップが、この小説のおもしろさです。このファンタジー的な展開が「あまりおもしろくなかった」という感想もありますが、いつかまた読み返してみてください。

自分の中には自分も知らない「自分」がまだ眠っている可能性があるというということに気づくかもしれません。

アニメ映画「Colorful」

2010年8月アニメ映画化され、劇場公開。
第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞ほか、映画賞を多数受賞。
監督:原恵一

声の出演:冨沢風斗、宮崎あおい、南明奈ほか

イメージソング、エンディングの歌をmiwaさんが担当。どちらもいい曲ですよ。

イメージソング:尾崎豊「僕が僕であるために」

エンディング:ブルーハーツ「青空」
そのほか、合唱曲もたくさん出てきます。原作と合わせて映画もぜひ。

ブックデータ

受賞歴
第46回産経児童出版文化賞受賞
国語教科書でもおすすめ
森絵都さんの『カラフル』は小学校、中学校の国語教科書でも読書におすすめの本として紹介されています。
教育図書小学6年生/光村図書中学校2年生/東京書籍中学校2年生

単行本のただ真っ黄色な装丁も好きです。

著者プロフィール

森絵都(もりえと)

1968年生まれ、東京都出身。
早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。『カラフル』をはじめ、数々の児童文学を発表。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。

【主な受賞歴】
『リズム』第31回講談社児童文学新人賞
『カラフル』第46回産経児童出版文化賞
『風に舞いあがるビニールシート』第135回直木賞
『みかづき』第12回中央公論文芸賞

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この本の担当者
ゆう

モットーは「おいしいごはんと本で豊かな人生を」
食べることと読むことが好きです。
学校図書館、大学図書館、よみきかせ、図書ボランティア、みーとぶっくすなど子どもや本に関わる仕事をあれこれ。本を通して人と人がつながることのお手伝いができたらうれしいです。
2021年、小さな移動本屋さんはじめました。(Instagram)

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