森絵都『カラフル』~世界は色で満ちている

森絵都「カラフル」表紙とPOP
  • BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊
  • 第46回産経児童出版文化賞受賞
  • アニメ映画が文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
  • 朝読書・読書感想文にもおすすめ

本を読みたいけれど、なにを読んだらいいのかわからないという10代におすすめしたいのが森絵都さんの『カラフル』。
もし、あなたがいま悩みや苦しみを抱えていて、もうすべて投げ出してしまいたいと思うようなら、少し休憩するつもりでこの本を読んでみて欲しい。人生に行き詰ったとき、そこから抜け出すためのヒントは必ずある。

本の紹介(あらすじ)

「おめでとうございます、抽選にあたりました!」

死んだはずのぼくの魂の行く手をさえぎり、突然現れた天使が言った。

前世で大きな過ちを犯したぼくに訪れた輪廻転生のチャンス。それは、自殺した中学生・小林真の体に「ホームステイ」して、自分がおかした「罪」を思い出すことだった。

人生は一度きり。死んでしまったら終わりと決まっているが、この本の主人公はラッキーなことに、もう一度生き返るチャンスが舞い込む。辞退しようとした「ぼく」だが、どうやら断ることができないシステムらしい。せっかくのチャンスを辞退しようとするところに「ぼく」の気弱さが表れているが。こうして半ば強引に「現実」の世界に引き戻され、小林真としてのぼくの人生が再スタートする。

真が生き返ったと喜ぶ父と母だが、間もなく、小林真をとりまく不運な人生が見えてくる。

死のうと思うくらいなのだから、小林真が楽しい人生を送っているわけでなないことは予想が付く。天使プラプラの言葉を借りるなら人生は「ハワイのような楽園ではない」のだし、何の失敗も悩みもなく充実すべてにおいてパーフェクトな毎日を送っている中学生は少数派だろう。それにしても小林真の人生ときたら「今となっては、なんで真がこれまで生きてこられたのかふしぎなくらい」だとぼくに同情されるほどに不運なのだ。

家族はそれぞれ自分のことばかり考えているような人たちばかり、憧れていた初恋の相手のショックな秘密を知ってしまう。

ぼくは「小林真」として、家族、友人を関わり合い、生きる道を模索する。小林真の人生は救われるのか!?そしてぼくは、自分の「罪」を思い出して、再び輪廻転生のサイクルに戻ることができるのか。家族はそれぞれ自分のことばかり考えているような人たちばかり、憧れていた初恋の相手のショックな秘密を知ってしまう。

家族も友人も進路も、小林真の人生はネガティブになることばかりで、いいことなんてひとつもないように思えるけれど、角度を変えれば今まで見えなかったことが見えてくる。自分が思ってるほど、自分の人生も悪くないと思えたら上々だ。
人生に行き詰る時は誰にでもある。そんな時は、自分の視界しか見えなくなるものだ。やり直しはいつでもできる。ファンタジーじゃなくったって。

心に残るフレーズ

みんなそうだよ。いろんな絵の具を持っているんだ、きれいな色も、汚い色も。

ここが読みどころ

この本のおすすめポイントをチェック!

①現実と非現実を描くファンタジーな展開

この本、Amazonでは「SF・ホラー・ファンタジー」ジャンルに分類されているが、SFホラーではない。どうせ転生するなら、イケメンとか偏差値があがるとか、なぜかかわいい彼女ができるとか人生うまくいくパターンの展開にして欲しいのに、現実にはそうならないらしい。

一度死んだぼくが他人の体にホームステイして中学生活を体験する、という非現実的な設定でありながら、嫌になるほど鬱々とした現実的すぎる小林真の毎日。このギャップこそがこの小説の魅力である。ぼく(自分)の目線から小林真という他者の人生を追体験するおもしろさも味わえる。

②リアルなのにコミカルで読みやすい

中学生が家族や友人の悩みを抱えて死を選んでしまうというとても重い内容がコミカルに描かれているので、さくさくと読みやすい。人生には楽天性が必要だ。

③中学生ならだれもがぶつかる壁や悩み

中学三年生の小林真は、家族のこと、友人のこと、そして進路のこと、さまざまな悩みを抱えている。繊細で少し傷つきやすい少年・小林真に自分を重ねたり、共感できる点があるはず。人との関わりの中で悩みを解決することは簡単ではない。悩みとどう向き合い、どう折り合いをつけていけばよいのか、ヒントが見つかるはず。

『カラフル』は1998年刊行から20年以上のあいだ、多くの10代に支持されている現代日本児童文学がの殿堂書ともいえるロングセラー小説。新しい小説が次々と刊行される中で、流行に敏感な10代に男女問わず読み続けられているのは、この物語の中に普遍的な人生のテーマが含まれているからと言える。

アニメ映画「Colorful」

2010年8月アニメ映画化され、劇場公開。
第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞ほか、映画賞を多数受賞。
監督:原恵一
声の出演:冨沢風斗、宮崎あおい、南明奈ほか
イメージソング、エンディングの歌をmiwaさんが担当。どちらもいい曲ですよ。
イメージソング:尾崎豊「僕が僕であるために」
エンディング:ブルーハーツ「青空」
そのほか、合唱曲もたくさん出てきます。原作と合わせて映画もぜひ。

本をチェックする

カラフル (文春文庫)
文藝春秋
森 絵都 (著)

出版社 ‏ : ‎ 文藝春秋
発売日 ‏ : ‎ 2007/9/10
文庫 ‏ : ‎ 259ページ

単行本のただ真っ黄色な装丁も好きです。

受賞歴など

第46回産経児童出版文化賞受賞
国語教科書でもおすすめ
森絵都さんの『カラフル』は小学校、中学校の国語教科書でも読書におすすめの本として紹介されています。
教育図書小学6年生/光村図書中学校2年生/東京書籍中学校2年生

著者プロフィール

森絵都(もりえと)

1968年生まれ、東京都出身。
早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。『カラフル』をはじめ、数々の児童文学を発表。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。

【主な受賞歴】
『リズム』第31回講談社児童文学新人賞
『カラフル』第46回産経児童出版文化賞
『風に舞いあがるビニールシート』第135回直木賞
『みかづき』第12回中央公論文芸賞

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