10代に読んで欲しい「戦争」をテーマにした絵本を紹介します。
短いページの中に描き切れなかったたくさんの物語が浮かんでくるような、そんな気がします。よみきかせにもおすすめです。
原爆をテーマにした絵本は、こちらに別にまとめています。
日本の絵本
米倉斉加年『おとなになれなかった弟たちに…』
戦争中、10歳の少年は赤ん坊だった弟のミルクをぬすみ飲みし、弟は栄養失調で死んだ。子どもの目で戦争と飢えを淡々と描きます。 亡くなった弟に対する罪悪感は、彼らが感じるべきものではないはずなのですよね。だれかが起こした争いに巻き込まれた人々が、心に辛く暗い影を心に落とす切なさ。米倉さんの描くシンプルな絵が強く訴えかけます。国語の教科書でも紹介されていますが、ぜひ絵本でも読んでみてください。
今西祐行『すみれ島』
太平洋戦争がおわったのち、特攻機の飛んでいった南の小さな島にひっそりすみれが咲きます。声高に戦争反対を叫ぶのでなく、静かに、子どもたちに平和の重さ、いのちの尊さを語りつぐ絵本です。
小学生の時に読んだことがある、という人もいるのではないでしょうか。中学生・高校生になり「特攻隊」について学んだあとで読み返してみると、彼らが平和に込めた思いを感じるような気がします。
『おきなわ・メッセージ つるちゃん』
8歳の少女をひとりぼっちにしてしまった沖縄戦。今でも忘れることのできない出来事を、少女は見てきたのです―。沖縄から発信する、命どう宝=命こそ宝のメッセージ。沖縄戦体験絵本。
『戦火のなかの子どもたち』
ベトナム戦争で死んでいっただ子どもたち、生きぬいてきた子どもたちへの熱い思いがこめられた絵本です。訴えかけてくるような子どもたちの視線に心打たれます。いわさきちひろ最後の絵本です。
海外の絵本
ルイーズ・ボーデン『ピートのスケートレースー第二次大戦下のオランダでー』
【オランダ】第二次大戦下のオランダ。ピートはスケートが得意な10歳の男の子。冬のある日、ピートは大切な任務を任されます。ある姉妹を隣国のベルギーまで無事に送り届けること。途中、ドイツ兵たちが目を光らせる中、ピートたちは無事にベルギーにたどり着けるのでしょうか!?ドキドキする危険な冒険。美しい景色が浮かび、余韻の残る作品です。
トミー ウンゲラー『オットー―戦火をくぐったテディベア』
【ドイツ】テディベアのオットーは、デビットに誕生日プレゼントとして贈られたもの。大事に世界大戦が始まり、デビッドはユダヤ人の両親と強制収容所におくられてしまう。オットーは戦火の中、たくさんの人たちの手を渡り歩くうちにボロボロになっていくオットー。数十年後、アメリカの骨董店のショーウィンドーに飾られていたオットーを思いがけない人が見つけます。オットーが自分の人生をふりかえる「自伝絵本」というユーモラスさも。
『エリカ 奇跡のいのち』
【ドイツ】第二次世界大戦下のドイツ。アウシュビッツへ向かう列車の中、ひとりの母親が小さな赤ちゃんを電車の窓から外へと放った。生き延びて欲しい…と奇跡を願って。実話をもとにしたノンフィクション絵本。命の奇跡と、追い詰められ苦しい選択を強いられた母の思いに胸が苦しくなります。
『国境を越えて―戦禍を生きのびたユダヤ人家族の物語』
【リトアニア】カプラン一家は、ナチス・ドイツの迫害を逃れてカナダへ移住する旅をはじめます。地球の4分の3の距離を移動するこの旅は、シベリア鉄道に乗りソ連・日本と国境を越えて、1年半にもおよびました。地図や資料とともに読める、著者の家族の歴史をつづる自伝絵本。
『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅』
【ドイツ】世界中の子どもたちに愛されている「おさるのジョージ」を生み出したA・H・レイ夫妻。ユダヤ人だったふたりは、ドイツ軍が攻め込む前にパリを脱出。組み立て式の自転車で走る彼らの荷物の中にはジョージの原画がありました。写真や資料つきでコラージュブックのような旅を描いた絵本です。この本を読んで、ますますジョージが好きになりました。
マイケル・モーパーゴ『だれにも話さなかった祖父のこと』
【アメリカ】マイケル・モーパーゴは『戦火の馬』など子ども向けの戦争小説をたくさん書いている作家です。『だれにも話さなかった祖父のこと』は絵本というには少し長めの短い本です。マイケルの祖父には、だれにも話したくない辛い記憶があります。祖父はマイケルにそっとその物語を語ります・・・。