角田光代『さがしもの』

  • 本好きをきゅんとさせる本にまつわる9つの物語
  • 通学や朝読書にぴったり中学生・高校生・本好きにおすすめしたい短編集
  • 国語入試問題によく出る本

本が好きな人ならだれもがきっと「本とわたし」のエピソードを持っている。長い付き合いの友人にある日ふと聞いて欲しくなるようなちょっとした物語。この本は、そんな小さな「本とわたし」の物語を集めたような短編集。この本を読み終えた後は、自分と本の小さな物語をだれかに聞いて欲しくなる。

本好きをきゅんとさせる本にまつわる9編の物語。

本の紹介とレビュー

毎夜、布団にはいりながら本を読むことを日課にしている。帰省するときも、旅に出るときも、もちろんキャンプに行くときも本を持ち歩く。ただ、ぬかりのない準備が苦手なので、本を鞄に入れ忘れることもしばしばある。(忘れ物は本に限らず、メイク道具から携帯電話までさまざまだが)

私は睡眠が得意なので、本がなければ眠れない、などということはない。本を読まなくてもぐっすりと眠る。とはいえ、寝る前に本を読まないと落ち着かない。まるでパンツをはき忘れているかのようで、そわそわとする。(もちろんパンツをはき忘れて出かけたことなど一度もない)

本を持っていれば大丈夫、というわけでもない。もしかしたらその本が、めちゃくちゃ面白くて一気に読み終えてしまったら……、そうしたら、もう読む本がなくなってしまって、パンツをはき忘れた人と同様になってしまうではないか。(パンツははいています)

ともかく、読む本がないまま布団に入るという最悪の事態を避けるため、私は出かけ先で本を買うことが多い。この時も、旅先で本を忘れたことに気づき、現地の本屋さんで購入したのだった。

この出会いが、わたしと角田光代さんの本との最初の1冊となった。(この本を読み終えた後で、わたしは角田光代さんの本を読み漁ることになる)なにげなく購入した本だったが、この本は旅に持ち歩くのにぴったりだった。

「旅する本」は、かつて手放した古本に異国の旅先でまた出会うというふしぎなめぐりあわせの物語で、旅先でページをめくる自分の「いま」とリンクして、なにかをぴたりと言い当てられたような気持になり、この短編だけで作家・角田光代に心をつかまれた。どの短編も、物語でありながら、本にまつわるだれかの大事なエピソードをおすそ分けしてもらうような、人のぬくもりが感じられた。

そして、これ以降、わたしはこの本を時々旅に連れ出している。

旅する本・・・学生時代に手放した本との旅先の古本屋での再会

だれか・・・恋人との旅先で発熱したわたしが出会った1冊の本

手紙・・・恋人と訪れるはずだった伊豆の旅館で見つけた1冊の本の中に挟まれた手紙

彼と私の本棚・・・一緒に暮らしていた部屋を出ていく彼と私の本棚問題

不幸の種・・・いつのまにか本棚に忍び込んでいた見知らぬ本、占い師が言った「部屋に不幸の種がある」という言葉

引き出しの奥・・・裏表紙にたくさん書き込みがあるという伝説の古本

ミツザワ書店・・・生まれ育った町にある小さな本屋とぼく

さがしもの・・・余命わずかの祖母から頼まれた1冊の本のさがしもの。

初バレンタイン・・・はじめての恋人と過ごすバレンタインに贈った本。

おすすめポイント

国語の教科書でもおすすめとして紹介されています。

国語教科書で紹介のおすすめ本

  • 中学校国語教科書で紹介
  • 三省堂・第一学習社 高校国語教科書 掲載

国語入試問題によく出る本

高校入試国語問題に出典
【2014年】山梨県

私立中学校国語入試問題に出典
【2018年】八雲学園中学校/東京純心女子中学校
【2016年】桐朋中学校/獨協埼玉中学校/千葉日本大学第一中学校
【2015年】桜美林中

本をチェックする

著者は、直木賞受賞作家の角田光代さん。単行本「この本が、世界に存在することに」を文庫化にあたり改題。個人的には、改題前のタイトルの方が好みです。

【もくじ】旅する本 / だれか / 手紙 / 彼と私の本棚 / 不幸の種 / 引き出しの奥 / ミツザワ書店 / さがしもの / 初バレンタイン / あとがきエッセイ交際履歴 /
(文庫本) 解説「人間は本を読むために生まれてきた動物」岡崎武志

さがしもの (新潮文庫)
新潮社
角田 光代 (著)

文庫: 240ページ
出版社: 新潮社
発売日: 2008/10/28

この本もおすすめ