朽木祥さんは、広島市出身の児童作家。デビュー作『かはたれ』は日本児童文学者協会新人賞受賞のほか、発表作品の多くが児童文学賞を受賞しています。作品ジャンルは小学生向けの児童文学から中高生や一般向けまで幅広く、どの作品も年齢に関わらずおすすめしたいものばかりです。
広島市出身の朽木祥さんはヒロシマや原爆を描いた作品も多く、国内はもとより海外でも高い評価を受けています。原爆により生きる苦しみを抱えた人びとの深い悲しみは、被爆二世でもある朽木さんにしか描けない物語ではないでしょうか。『八月の光』と『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』『あひるの手紙』は、2014年ドイツのミュンヘン国際児童図書館が発行する国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ (The White Ravens)」 にも選定されています。「ホワイト・レイブンズ」は通常ひとり1作品と言われ、ひとりの作者の本が3冊も選ばれるのは異例だそう。
「もうすぐ雨に」は光村図書小学校3年の国語の教科書に選定。『かはたれ』『風の靴』『八月の光』『光のうつしえ』は、厚生労働省の児童福祉文化財に選定されるなど、おすすめ作品ばかりです。
たしかな表現描写とたしかな文章で生きることの痛みと輝きを描き、読後に静かな余韻を残す朽木祥さんのおすすめ作品を紹介します。
著者プロフィール
朽木祥(くつきしょう)
1957年、広島市生まれ。
【主な受賞歴など】
『かはたれ』・・・児童文学ファンタジー大賞佳作、第39回日本児童文学者協会新人賞、第35回児童文芸新人賞、第53回産経児童出版文化賞
『彼岸花はきつねのかんざし』・・・第33回日本児童文芸家協会賞受賞
『風の靴』・・・第57回産経児童出版文化賞大賞受賞
『オン・ザ・ライン』・・・全国青少年読書感想文コンクール指定図書
『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』・・・第9回福田清人賞、第63回小学館児童出版文化賞受賞
『あひるの手紙』(佼成出版社)第55回日本児童文学者協会賞受賞
朽木祥おすすめの本
『八月の光・あとかた』
ヒロシマ原爆投下のあとを生き抜いた人たちの魂に寄り添う連作短編です。『三十万の死があれば三十万の物語があり、残された人々にはそれ以上の物語がある。』とあとがきで語るように、それまでの児童向けの戦争小説ではあまり描かれなかった、生きる人々に寄り添うような物語です。小学校高学年から中学生向けとして、読書感想文にわたしがよくおすすめする1冊です。
オン・ザ・ライン
スポーツ小説、青春小説が好きな人におすすめしたいのがこの本。高校からはじめたテニスのおもしろさの虜になった侃は、勝利を目指し、仲間と切磋琢磨しながらテニス三昧の毎日を謳歌していたが…。物語が思いがけない展開になり、切なく心打たれる物語でした。あらすじチェックせずに読んでみてください。
光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島
『八月の光』と合わせて読んでほしいヒロシマの物語。戦後から25年後の広島、中学生たちを主人公に、残された人たちの悲しみ・苦しみの深さに触れる物語です。小学校高学年から中学生向け。
風の靴
海が好きな人、冒険に出かけたい人にぜひおすすめしたいのがこちら。兄が通う難関中学への受験に失敗し、公立中学校に通うことになった海生(かいせい)。大好きだったおじいちゃんの死をきっかけに、親友とヨットのに乗り込み、海への家出を決行する。ひと夏の冒険物語です。こんな家出、わたしもしてみたい。
引き出しの中の家
幼いころ、机の引き出しやお菓子箱の中に小さなお人形の部屋を作って遊んだものです。この物語の主人公・七重もそんな女の子。お母さんを亡くして、おばあちゃんの家で暮らすことになった七重が作った引き出しの中のお家に、ある日、小さなお客様がやってきます。それは、おじいちゃんから聞いたことがある”花明かり”でした。花や緑を美しくさせる力をもつという”花明かり”と少女たちの時間を超えたほっこりファンタジー。
あひるの手紙
ある日、一年生のクラスに手紙が届く。びんせんにはたったひとこと「あひる」。子どもたちは、みんなで考えて手紙にお返事を書きます。こころがふんわりとあたたかくなる物語。小学校低学年向けのお話ですが、いろんな人に読んでみてほしいな。