山口真美『自分の顔が好きですか?「顔」の心理学』

つまりあいつは「お前の姉さんはブスだ」と弟に言ったのだ。あの男ぜったい許さん。いつか殴る、と女子高生の私は誓った。
そういうお前の彼女はどんなツラしとんじゃい。
な、なんだ、か、かわいいじゃないか←勝ち目なし

「自分の顔が好きか?」と聞かれたら、つまりわたしは顔についてどうこう言われるのが大っ嫌い。←自分は言うくせに

つまりわたしは顔についてどうこう言われるのが大っ嫌い

それから月日は流れて、わたしは私を知る人のいない土地で母となった。それなりに仲の良いママ友などもできて、ある時、彼女がこう言った。

娘ちゃんもママに似て美人さんだもんね。

その言葉をわたしは一字一句覚えている。社交辞令にしても褒めすぎと苦笑いのわたしに彼女はきょとんとしていた。

不思議なことがあるものだ。

ある人からは醜く見えるものも、他の人からは美しく見える。

思えば、あの頃の私はいつも仏頂面で、世の中に皮肉と悪態ばかり吐き出して生きていた。子どもと過ごす日々で見せる顔は、あの頃のねじ曲がった表情とは違うものだったろう。いくらか優しくなれたし、素直に笑えるようになった。たぶん、わたしをブスだと堂々と言ったあいつの前での私の顔は確かにブスだったのだろう。一方で、ママ友と一緒にいる時のわたしは、いい表情をしていたのだと思う。

たしかに、わたしにも大きな変化はあったが、表情が人に与える印象は大きいと感じたできごとだった。ママ友の何気ないひとことは、顔についてネガティブに考えることを脱するきっかけにもなったし、顔の不思議について考えるきっかけにもなった。

ちなみにわたしは決して美人とは言えない顔立ちなので、これは単に自分がとてもいい人キャラであると言いたいだけのエピソードである。

ある意味、表情のもつイメージは絶対的とも言える。

怒ってる人を怖いと思う。

笑顔を見ると素敵な人だと思う。

表情がないと、自分に関心がないのだな、と寂しく感じる。

「目は口ほどに物を言う」ということわざもあるが、わたしたちは表情で感情を伝えたり、読み取ったりすることができる。上手な人もいれば、苦手な人もいる。

顔がすごく気になる人もいれば、顔なんて興味ないという人もたまにいる。

どんな人も顔がない、という人はいない。

いたら、怖い。実は、生まれたばかりの赤ちゃんも、ちゃんと顔がわかる。つまり、顔は、わたしたちが社会で生きるためにすごく大事な役割を持っている。

ただし、美人とかイケメンとかブスとか、勝手に判断されるのはいけ好かない。これについても、美人やイケメンとはなにかってことのヒントがこの本の中にある。

顔がきらいとか顔に振り回されがちな人は、ちょっと読んでみるとおもしろいかも。顔に対する考え方が少し変わるかもね。

ところで、ブスって言った男はどうしてるかって。あいつは長男なんだけど、どっか行ってしまったらしい。あいつを殴ってやると思った瞬間もあったけど、いなくなっちゃったら殴れないからまぁしょうがないよね。

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タイトル:自分の顔が好きですか?――「顔」の心理学
著者名:山口真美
出版社 : 岩波書店
発売日 : 2016/5/21
新書 : 224ページ

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