ある日突然、家がなくなってしまうとか、家族がいなくなってしまうことを想像している人は少ないと思う。わたしも、自分が家を出ていくことを想像することはあっても、家から追い出されてしまうことを考えたことはあまりない。
この本は、ある日突然、お父さんからの家族解散宣言により、家を失った中学生のたむちんこと田村少年のホームレス生活の記録である。
中学生がひとりでホームレス生活⁉
え?どゆこと?
びっくりするよね。
一家解散宣言
「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家の方には入れなくなりました。厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きてください。……解散‼︎」
父はそう告げると、どこかに去ってしまった。
家がなくなった。
それは、僕の想像を超えた出来事だった。13歳の僕には理解しきれなかった。
「僕は、一人で大丈夫。なんとかするから」
兄姉に心配をかけまいと、たむちんは近所の公園でひとり暮らそうと思い立つ。幸い、公園には雨風をしのぐウンコ型の遊具がある。
公園の水でお腹を満たし、雨で体を洗う、空腹に耐えきれずにダンボールにかじりつき、小学生たちにウンコの神様と呼ばれ崇められる(笑)
中学生がホームレスになるという深刻な現実を、腐らずに朗らかな人柄で乗り越えていく、たむちんの前向きさと逞しさに心を打たれる。
「笑えて泣ける」というようなキャッチフレーズで紹介されているこの本だけど、「笑える」のは、たむちんが大人になって、芸人という夢を叶えたから。実際には、中学生が公園でひとりで生活をするのはとても危険なこと。こうした状況の中で、たむちんには友人や近所の人など、温かく見守り手を差し伸べてくれる人たちがいたことは、とても大きい。
突然、家を失ったり、家族がいなくなったりすることは、よくあることではないけれど、いつだれの身に起きてもおかしくない。
「もしも自分だったら」という視点はもちろん、「もしこれが友だちだったら」という視点でも読んでほしい。自分なら友だちのピンチに気づいて、支えてあげられるだろうか、どんなサポートができるだろうか。大人も頼りないかもしれないが、ためらわず、周りの大人にも助けを求めてほしい。
たむちんとご兄姉がちゃんとした大人になってくれてよかったと心から思う。
おすすめポイント
オリコン年間書籍ランキング2007単行本部門:実売部数1位
オリコン年間書籍ランキング2007タレント本部門:1位
お笑いコンビ「麒麟」の田村裕さんが実体験を描いたベストセラー。
小学校高学年から読める児童書版もあります。
中学生・高校生に読んでほしいおすすめの1冊。
テレビ番組で語られたエピソードを本で改めて読んでみると、おもしろさの向こうにある、切なさや逞しさがひしひしと伝わる。
映画・ドラマ化
2008年劇場公開
監督:古厩智之
出演 :小池徹平, 西野亮廣, 池脇千鶴
ジャンル: キッズ、ドラマ
映画もよかったですが、フジテレビ・ドラマ版の主演を演じた黒木辰哉さんがたむちんのイメージにぴったりでした。小池徹平君、ちょっと中学生に見えない…。この再現ドラマには、中学生らしさがめちゃくちゃ大事だと思うんだ。
本をチェックする
出版社 : ワニブックス
発売日 : 2007/8/31
単行本(ソフトカバー) : 191ページ
【もくじ】
衝撃の解散劇 /公園生活がスタート/空腹の果てに…/ウンコのオバケと呼ばれて…/野良犬とガチンコ勝負/Tシャツとの悲しい別れ/掛けられなかった電話/人生を変える奇跡的な出会い/兄姉それぞれの苦労/あっけない再会〔ほか〕