- 中高生に読んで欲しいいじめをテーマにした本
- 著者自身の体験から生まれた小説
- いまいじめで苦しい思いをしている人に
あのころぼくは、マウスだった。
この小説は、著者の中園さん自身の壮絶ないじめ体験を投影させている。同じような思いをしている人に「それでも生きて欲しい」と伝えるために。
あのころぼくは、マウスだった。(中略)
どのボタンを押しても電気ショックを回避できないと知ったとき、マウスは無気力になり、回避する努力を放棄する。
教室では不良グループである竹杉君たちからいやがらせやいじめにあっていた。しかし僕を本当に苦しめていたのは陰湿な沼淵くんによる放課後のいじめだった。学校が終わった後、沼淵くんに呼び出され、残酷な言葉を浴る。
二重のいじめにしばられて、無気力になってしまった僕を救ってくれたのは、転校生のI君だった。I君は僕に、ここから逃れるためのすべてを教えてくれた。
竹杉くんたちに、学校を守るために力を貸してほしいと声をかけ、本来正義感の強い彼らはすぐに変わった。沼淵くんによるいじめも明るみに出て、沼淵くんは僕の前で涙を流して謝罪をする。
すべてはいい方向に解決した、ように見えた。
やがて、沼淵くんによるいじめが再びはじまるのである。
学校生活の中で、一見まじめで優等生である沼淵くんの闇は底が見えない深さを持つ。それは執拗で嗜虐心の強い、病的とも言えるものだった。
自分の力で解決したいと、僕はその問題をひとりで抱え込むが…。
沼淵くんの抱えている闇の正体はわからないが、それはとても深く、いじめをすることでしか自分を確かめられないほどの依存に陥っていたのだと、のちに知る。
いじめ依存症~いじめる人の闇
いじめをすることで、誰かを自分の思い通りになる支配下に置くことで安心を得る。いじめをすることが自分の存在確認になる。
これは「いじめ依存症」の症状と言える。
依存症だから、やめたくてもやめられないのだ。
いじめをやめられたいことを一種の病気だととらえることは、間違っていないかもしれない。
ひとりで解決しようとしていた僕だが、結論、それは無理なことだったとも知る。
僕のようにまじめで優しい人は、こうした病んだ状況にある人を突き放しすことが苦手で、一度こうした関係に「つかまって」しまうと、断ち切るのが難しい。
そういう自分を客観的に見つめ、危険な人から自分を遠ざける力も必要だと、著者は説く。
何よりも自分を守ることが最優先、という意識を持たせる教育も必要ではないか。
「人にやさしく」の前に。
「自分と同じような経験を繰り返して欲しくない」著者の中園直樹さんは、そんな思いで辛かった経験を小説にしました。いま苦しんでいる人に生きて欲しいというメッセージをこめて。
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発売日 : 2003/6/1
単行本 : 133ページ
ISBN-13 : 978-4835560007