如月かずさ『給食アンサンブル』~給食はいつもあたたかい

如月あずさ『給食アンサンブル』表紙とPOP

私の中学では給食があった。

少食で好き嫌いが多かった私は、小さいころは筋金入りの給食嫌いだった。給食の時間が終わってもひとり残されて、食べきれないお皿を前に泣きながら昼休みを過ごしていた記憶がいくつもある。

一方で、振り返ってみると、中学の給食の時間はそれほど嫌な思い出がない。むしろ、好きな時間だったように思う。

成長とともに食べられるものが増えてきたことも大きい。小学校と違い、中学校では好き嫌いで叱られることがなくなった。勉強か難しくなってきた分、息抜きのような給食の時間は癒しの時間だった。お昼の放送で、流行の曲が流れているのもよかったのかもしれない。

こちらは、中学生の給食をめぐる連作短編集。

本の紹介とレビュー

給食の味は小学校のときから変わらないのに、どうしてみんなどんどん変わっていっちゃうんだろう。

だけど、いったいおれになにができる?

おれはいつまでおれでいられるのだろう。

給食は大人に向かって成長する心と体をしっかりと支えてくれる。そんな給食の時間にふと垣間見える六人の中学生たちの揺れる心がやさしく胸に響く連作短編。ひとつ読み終わるごとに、おなかがほんのり温かくなるような気がするのは、給食が出てくるからかなぁ。

七夕ゼリー

美貴はお嬢様である。小学生までは、東京のお嬢様学校の初等科に通っていた。父親の事業が失敗し、環境ががらりと変化。いまは方の祖母と暮らしながら、東京から遠く離れた公立中学校に通っている。

新しい友だちができても、美貴はまだ新しい生活になじめずにいる。

この部屋も、この家も、学校も。自分の居場所ではないと感じる美貴だが…

麻婆豆腐

高梨桃には、気になっていることがある。自分がすごく子どもっぽいんじゃないかということ。中学生だというのに、小さい子どものための童話ばかり読んでいるし。辛いもの苦手。みんなは給食の麻婆豆腐を甘すぎると言うけれど、辛い味が苦手な桃にはちょうどいい。いつまでもお子さまで自分だけが取り残されたような気分。

このままじゃわたしは、大人になっていくみんなに置いていかれちゃう。わたしもみんなのように大人にならなくちゃいけないんじゃないかな。そんなふうにあせってしまって、心がどんどん重たくなっていくみたいだ。

黒糖パン

道橋満は恋をしている。相手は、いつも、ふざけてばかりの陽気な親友・雅人の姉・詩織さんである。

「恋をしている。詩織さんは高校生。大好きな本の話で盛り上がり、詩織さんに本を貸してもらう。少し大人っぽい中高生向けの本を貸してもらった。

その詩織さんの様子がおかしい。力になりたいと思う道橋だが…。

ABCスープ

愉快で明るく、運動神経抜群で大食いな人気者、それがこのおれ、足立雅人だ。

能天気で悩みもなさそう、なんて言われるけど、ところがそうでもないのだよ、諸君。こんなおれにだって、悩みぐらいちゃんとあるんだな、これが。

ミルメーク

清野は優等生である。成績は学年トップ。「いや。ぼくはそんなに頭がいいわけじゃないよ。単に暗記が比較的得意なだけで…」なんてセリフを、嫌味ではなくさらりといい放ってしまうような、空気を読まない、普通のいい人である。そんな清野の憂鬱とは。

卒業メニュー

飯島梢は食べることが大好き。給食をおかわりするのは日課、給食の残りものをめぐるジャンケン勝負にも毎回参加するほど、給食が大好き。いつも明るく、元気さっぱりした性格の梢だが、実は、親友に話せずにいる秘密を抱えていた。

ところで、昨今の給食っておしゃれなメニュー多いですよね。大人になってからも給食を食べてだけど、自分が食べていたころの給食よりも格段に美味しい。

本をチェックする

中学生たちの物語です。小学校高学年から中学生におすすめ。朝読書にもおすすめです。

単行本の五十嵐大介さんの描く表紙の女の子もかわいいのよね。

給食アンサンブル (飛ぶ教室の本)
光村図書出版
如月 かずさ (著), 五十嵐 大介 (イラスト)

出版社 ‏ : ‎ 光村図書出版
発売日 ‏ : ‎ 2018/9/5
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 192ページ

【もくじ】

七夕ゼリー/麻婆豆腐/黒糖パン/ABCスープ/ミルメーク/卒業メニュー

この本もおすすめ

↓ 同じ作家の本を読みたいなら ↓
スペシャルQトなぼくら
講談社
如月 かずさ (著)