わたしがハンセン病についてきちんと知りたいと思ったのは大人になってからでした。ハンセン病という言葉を聞いたのは大人になってからでしたが、幼い頃から「こんな病気がある」ということをぼんやりと知っていたような気がします。
かつてハンセン病は「感染力が強く治らない病気」として、とても恐れられていました。そのため、日本では感染した人を強制的に隔離する対策を進めていました。こうした間違った知識や対策は、ハンセン病に対する強い差別や偏見を生み出しました。現在は治療薬もできて、治る病気であることが広く知られています。しかし、それまでには長い時間がかかり、多くの人が病気そのもの以上に、社会の差別に苦しみました。
ハンセン病についての本を読むと、「人としての尊厳とはなにか」とか「私たちはどう生きるべきか」といったことをつい考えます。差別や偏見の正体がぼんやりと見えてくるような気もします。ハンセン病は過去の歴史かもしれませんが、同じような差別や偏見の歴史を繰り返さないようにと願いつつ、ハンセン病について知りたいという若い人に、手に取って欲しい本をいくつか紹介します。
ハンセン病ってなに
ハンセン病について知らない人に、まずは、よく知らないままで手に取ってみて欲しい本です。ここから「ハンセン病ってどんな病気だろう」「どんなことがあったのだろう」と考えるきっかけになるような本です。
13(サーティーン): ハンセン病療養所からの言葉
【中学生から大人まで。写真詩集】
芸人・俳優・ナレーターなど活躍する石井正則さんが、全国13か所にある国立ハンセン病療養所をまわり、フィルムカメラにおさめた。離の中で生まれた詩(ことば)と失われゆく記憶を残すために。入所者によって紡がれた23篇の詩とともに。
ドリアン助川『あん』
【中学生から大人まで。文学(一般小説)】
小さなどら焼き店のバイトの求人にやってきたのは70歳をすぎた女性・徳江だった。手が不自由だが、徳江のつくる「あん」は極上で、どら焼き店は繁盛しはじめるのだが…。
神谷美恵子―ハンセン病と歩んだ命の道程
【中学生から。ノンフィクション(児童書)】
ハンセン病療養所の入所者の中には、家族と離る寂しさや不安、差別や偏見から心に深い傷を負う人も少なくありませんでした。神谷美恵子は、それまで見過ごされていたハンセン病患者の心の治療に取り組んだ女性医師です。彼女の心を動かしたものはなんだったのでしょうか。
きみ江さん: ハンセン病を生きて
【小学校高学年から。ノンフィクション(児童書)】
幼いころから男の子に負けないくらい元気いっぱいだったキミ江さん、ハンセン病のため人生の大半を療養所で過ごしました。辛いこともありますが、前向きに人生を生きるキミ江さんの波乱万丈の生涯を綴ったノンフィクションです。
もっと深く読みたい人に
さらに深くハンセン病について知りたいという方に。
火花―北条民雄の生涯
ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと
てっちゃん: ハンセン病に感謝した詩人
ハンセン病とは
ハンセン病とは「らい菌」による感染症です。かつては”らい病”とも呼ばれていましたが、「らい」という言葉が差別や偏見を助長するとして、現在では「ハンセン病」としています。
主な症状は、皮膚や末梢神経の麻痺です。「プロミン」や新薬の開発で、現在は外来治療で治癒できます。日本では感染者数は大幅に減少していますが、世界では年間22万人の新規感染者が報告されています。
参考:NIID国立感染症研究所
ハンセン病についてのブックリスト
小説
あん | ||
蛍の森 | ||
ノンフィクション
きみ江さん: ハンセン病を生きて | |
神谷美恵子 ハンセン病患者と歩んだ命の道程 | |
ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと | |
火花―北条民雄の生涯 | |
13(サーティーン): ハンセン病療養所からの言葉 | |
てっちゃん: ハンセン病に感謝した詩人 |
読んだ本が増えたらまたリストに追加します。