- 小学校高学年から中学生向け
- ぼくを産んだ母をぼくは知らない
- 友だちや家族、LGTBについて考える物語
ぼくの家族とぼくを産んだ人
小六の十一月は、ぼくにとって特別な月。おそらく、とうさんにとっても。
あのときぼくがあの葉書を見つけなければ、あの十一月はまったくちがうものになっていたと思う。
ある日、父さんの書斎で偶然見つけた1枚の葉書。そこには、こう書かれていた。
「このたび、亡妻華子の七回忌供養をいたしたく存じます」
差出人は、井浦凪。
「井浦、華子」
八年前に亡くなっているらしいその人の名前を、ぼくはつぶやいた。
これは、ぼくを産んだ人の名前だ。
波楽(はら)は、小学6年生。作家の父と、テレビリポーターをしている母、それから妹の美萌(みも)と暮らしている。父は波楽が幼稚園の時に母と再婚した。それから生まれたのが妹の美萌だ。家族の中にいても、波楽は自分だけが左利きであることと同じように、少しだけみんなとは違うと感じることがある。
学校では、クラスの中で「変わっている」と思われ、だれともしゃべらないレンのことを気にかけている。波楽にも学校では「絶対に話しかけるな」というけれど、放課後は一緒に帰るし、休日にはゲームをして遊ぶほど仲だっていい。
波楽は、書斎で見つけた葉書の差出人・井浦凪をたずねることにした。
ぼくを産んだ人への思い。
家族を思いやる気持ち。
レンへの複雑な感情。
いくつもの感情を同時に抱えることは大人だって難しい。もう10代から遠く離れてしまったわたしが、自分だったら・・・と置き換えて考えるのは難しい。
いくつもの複雑な感情に押しつぶされることなく、物事をまっすぐにとらえようとするまっすぐさが胸に痛く残る。
レンのこれからや、レンの目線で描かれる物語もいつか読んでみたい。
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戸森しるこ『十一月のマーブル』
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