長谷川夕『どうか、天国に届きませんように』

長谷川夕『どうか天国に届きませんように』
  • 不思議や怖い本が好きな人に
  • 孤独が切ないライトホラーミステリー
  • 『君は僕を殺せない』長谷川夕の三作目

広辞苑で「オカルト」をめくると、こう書いてある。

神秘的なこと。超自然的なさま。

 

たとえば、幽霊にまつわる心霊ものや超能力などの超常現象、怪奇、背筋がぞっとする都市伝説、それから妖怪やエイリアンなどの未確認物体ーそういった、自然由来ではない不可思議な出来事をわたしたちは「オカルト」と名付け、その未知の世界にある者は怯え、ある者たちは強く惹きつけられる。

解明できない事象を「不自然」と表現するものもいるが、「起こる」ことに対して抗うことなどできない現象は、未知であるというよりも「超自然的」なことなのだと受け入れるしかないのかもしれない。

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あらすじ

*もくじ*
黒い糸/白い檻/灰の箱/牢獄/天国
***

これは抗うことのできない「超自然的」な現象に対峙する彼らの孤独の物語。

オカルトの世界に憧れながらも、「特別な出来事は特別な人にしか起こらない」のだと諦めていた「僕」は、ある日、自分の指にからむ「黒い糸」が見えるようになる。その黒い糸の先には、必ず死体があるのだった。「助けを求める魂を救う」という特別な力に僕はのめりこんでいくが…(黒い糸)

死んだはずの兄が「みえる」と嘘をついた少年が連れていかれたのは、不思議な力を持つ子どもだけが集められた『家』だった(白い檻)

古い家の敷地で見つけた焼却炉。閉じられていた焼却炉を開けた時から消失が始まる。(灰の箱)

わたしの強みは、怖がらないことだ。孤独以外は怖くなく、物怖じをしない。未知の世界にも、なんにでも飛び込んでいける。

そういうのってすごく羨ましい、と誰かに言われたことがある。わたしもそうだねと笑うけれど、飛び込んでも怖くないのは、けっきょくのところどこに飛び込んだとしても、どこにも居場所がないからだ、と思う。

不安にならないのは、もともとわたしの居場所じゃないからだ。そこでは何も手に入れられない。それがわかっているから不安にならない。

だれとも分かち合えない悲しみと苦悩を抱く彼らは孤独を嘆き、行き場のない思いは共鳴し合い、めぐりあう。だが、「特別な孤独」に魅入られた彼らは、孤独に怯えながらも誰とも共有できない孤独を誰よりも愛している。彼らが手に入れたい彼らの居場所は「どこでもない場所」なのだろう。届かないようにと願う声は、行き場のない彼らの思いそのものだ。

最後に、彼らは行きたい場所に辿り着けたのだろうか。

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