貴志祐介『十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA』~多重人格を描くホラーミステリー

貴志祐介『ISOLA』
  • 怖い本が読みたい中高生におすすめ貴志祐介デビュー作
  • 阪神大震災を舞台に多重人格の少女を描く
  • 第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作

多重人格VSエンパシー

加茂由香里には、人が発する感情を読み取ってしまう不思議な力がある。心の中にだけある声が、思考や視覚的イメージもが、感情の波動を通して伝わる。エンパシーと呼ばれる特殊な能力。そうした力を持つ人間をエンパスと呼ぶ。

生まれながらに持つ能力のために、由香里は精神分裂病と診断され、薬で症状を抑えながら暮らしていた。

しかし、そうした自分の能力が誰かの助けになることも彼女は知っている。阪神大震災で、心のケアボランティアに参加した由香里は、ひとりの少女と出会う。

森谷千尋の中から聞こえるいくつもの人格の声。内向的で暗いユウコ、幼いままの無垢なヒトミ、聡明で大人びたトウコ…。
千尋はいくつもの人格を共存させた多重人格者だった。

5歳の時に事故で両親を失い、以来、苦辛に襲われる度に、千尋の中に生まれた人格。
由香里はその中に、激しい攻撃性を持つ危険な十三番目の人格・イソラの声を聞く。

やがて、千尋の周りで次々と不慮の死が続く。千尋が直接的な死因となる証拠はないが、千尋の多重人格がこの事件と結びついていく。

自分の置かれた辛い現実に立ち向かう力を持たない幼さは、自分の中に新たな人格を生み出することで生きる術を手に入れた。
誰もが、心の中にいくつもの感情を持ち合わせている。心の揺れる思春期ならば、その感情はさらに複雑化される。
好きと嫌い。焦がれるほどの誰かへの思いは、同時に憎しみをも生む。
逃げたい本音と逃げられない現実。
感情のバランスをとりながら、相対する感情さえも同時に存在させることは可能だ。葛藤は、バランスを取る感情の過程だ。多重人格は、バランスの取れない感情を共存させ、自分を守るためのひとつの手段に過ぎない。
自分を守るために生まれたはずの人格が、激しい憎悪をもつ悪魔だったとしたら…。

日本には、潜在的に多重人格に陥る人が少なくないらしい。

あなたは大丈夫ですか?

多重人格VSエンパシーのホラーミステリー。

映画「ISOLA多重人格少女」原作

2000年1月劇場公開。有名ホラー映画「リング0バースデイ」と同時上映されました。
監督:水谷俊之
出演:木村佳乃、石黒賢、黒澤優ほか
主人公のふたり由香里と千尋の過去が描かれないなど、小説よりも映画の方がホラー要素高めです。映画と小説の違いを見つけながら、どちらもそれぞれ楽しめますよ。

ブックデータ

十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)
角川書店(角川グループパブリッシング)

タイトル:十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA
著者:貴志祐介
文庫: 401ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日: 1996/4/18

受賞歴など

第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作
貴志祐介さんのデビュー作

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