さだまさし『眉山』

  • 徳島を舞台に描かれるさだまさしのベストセラー
  • 映画化で話題の原作

東京で働く咲子の元に、ある日、ふるさと徳島から電話が入る。検査のために入院している病院からの電話を受け、徳島へ戻った咲子に母が末期がんであるという辛い事実が告げられる。

母一人、子一人で暮らしてきた咲子が、自分は私生児だと知ったのは中学生の時だった。身寄りのない徳島で、店を切り盛りしながらひとりで咲子を育ててきた母は、三年前にパーキンソン病を患い、いまはケアハウスに入居している。

母を看取るため徳島に残ることを決意をした咲子だったが、思いがけず、母が献体に申し込んでいることを知る。母の行動に戸惑う咲子だったが、やがて自分が生まれる前の父と母の物語を知ることになる。

これは、ふたりの女性の物語である。父を知らずに育った咲子が自分のルーツを探る物語であり、母・龍子が自分を貫いた愛の物語である。母を想う娘の優しさと子どもをもつ女性の強さや逞しさに胸を打たれる。

なぜ「献体」なのか。咲子が自分の生まれたルーツを見つけた時、私たち読者もまたこの物語の答えを見つけることになる。この小説の一番の読みどころは、その瞬間のはっとする鮮やかさだと思う。

映画『眉山』

2007年5月劇場公開
【監督】犬童一心
【出演】松嶋菜々子、宮本信子、大沢たかお
【主題歌】レミオロメン「蛍」
第31回アカデミー賞優秀作品賞

映画化のほか、ドラマ化や舞台化もされています。

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文庫: 224ページ
出版社: 幻冬舎
発売日: 2007/4/1

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