- 東日本大震災をテーマにした小説
- 「死」を乗り越える
- 第26回三島由紀夫賞ほか受賞
届かない声を届ける
「海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、「想像」という電波を使ってお送りしている番組
想ー像ーラジオー。
パーソナリティはDJアーク。」
想ー像ーラジオー。
パーソナリティはDJアーク。」
災害や事故や事件に巻き込まれた人たちは、突然に日常から切り離されてしまったことに、すぐに気づくのだろうか。一方的に日々や肉体から取り残された心は、まだそこに留まっているのではないかと思うのは、感傷的になっているからばかりではない。そうした場所で霊魂の話が尽きないのには、きちんと理由があるのだろう。
突然に残された私たちも、死者の声に耳を傾けようとすることで救われることもある。その声が聞こえない人の方が多いだろうけれど。物語小説だと思っていたので、想像していたような作風とは違ったおもしろさもあり。
残念ながら想像ラジオがうまく聞こえない私は、想像力に欠けているのかもしれないが、間違いなくこの放送のリスナーたちはいる。
想像を電波にしてラジオ放送を文字にするというのも新しく(途中で曲も流れちゃうからね)、いとうさんらしい手法で、たくさんのだれかを代弁し、だれかを励ましたい思いが詰まっているように感じた。
ブックデータ
第26回三島由紀夫賞
第149回芥川龍之介賞候補
第35回野間文芸新人賞受賞
第10回 ダ・ヴィンチ OF THE YEAR 2013
「キノベス!2014」1位
第11回本屋大賞第8位

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