額賀澪『ヒトリコ』~ひとりを選ぶことの孤独と自由

額賀澪『ヒトリコ』 YA文学
【BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊!
小学館文庫小説賞ほか受賞、額賀澪さんのデビュー作
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ひとりを選ぶということ

人と関わることは、煩わしさを背負うことだ。気遣いに疲れ、拒絶され傷つきこれ以上だれかと一緒にいることに耐えられない、というのならいっそ、ひとりでいることを選んでみてはどうだろう。

「私はひとりぼっちがいい」と初めから思う中学生や高校生はいないはずだ。

学校という集団行動の場では、だれもが一度は「みんな」になる。その中でひとりぼっちでいることは、「みんな」からはみ出しているということだし、「みんな」から拒絶されていると見なされることも少なくない。本人にとっては孤高な行動ともいえる「ぼっち」だが、まわりからは常に好奇と憐憫と軽蔑の視線が送られる。それはそれで、かなり面倒なことだ。

ひとりでいることはとても勇気のいることだ。


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深作日都子(ひとこ)は、小学校5年生の時ふとしたことでクラスからハブかれてしまう。それはとても些細な事で(だれも可愛がってなどいない金魚のことだし)、つまりはちょっとした勘違いでしかない(殺意を抱くほど金魚っを憎んでいる小学生などごく少数だ)なのだが、クラスも先生も敵に回ったいま、日都子は抵抗することをあきらめ、「みんな」を捨てて、ひとりになることを選んだ。そんな彼女をまわりは「ヒトリコ」と呼んだ。

「関わらなくてもいい人とは関わらない」

学校では潔いほどに凛として心を閉ざす日都子の心を支えになったものは、ピアノとそれを教えてくれるキュー婆ちゃんだけ。しかし、唯一の理解者であるキュー婆ちゃんも、いつまでも日都子のそばにいてくれるわけではなかった。

 

教室に金魚を残し小学5年生の時に転校した冬希もまたこの物語の鍵を握る大事な主人公のひとり。社会科見学にも学芸会にも口を挟むモンスターペアレンツの母に、手を焼いていた。母の存在によって、冬希は自分が担任やクラスのみんなから腫れ物に触るように扱われていることにうんざりしている。おかしくなっていく母をどうにもできないもどかしさと煩わしさを抱えながらも、現実を受け入れて日々を送る冬希。

いつか誰かを責めた言葉や、わけもなく言えなかった言葉が、いつまで刺さったままの人もいる。うまく処理できない感情を抱えたまま、割り切ったふりをして、生きていく。

家庭の事情で祖母のいる町に戻ってきた冬希は、高校の入学式で懐かしい同級生たちと再会する。その中に、日都子がいた。自分の残してきた金魚が彼女を大きく変えたことを知った冬希は…。

ひとりを選ぶことは「みんな」という鎖を外し自由を手に入れることだ。しかし、その自由には孤独がつきまとう。「みんな」の中から抜け出し「ぼっち」でいることは、「選択」というよりも「必然」に他ならない。みんなの中で、理由もなく「ぼっち」を選ぶ人はいないのだから。そこには日都子のように「ぼっち」を選ばざるを得ない理由がある。

それなら、ひとりでいる日都子に関わり手を差し伸べようとする冬希を突き動かす感情はなんだろう。

もがいても逃れようのない現実を受け入れる、それを「優しさ」だという人もいるが、その柔さは「弱さ」であるとも言える。自分を愛しているのかも憎んでいるのかもわからないほど壊れてしまった母親を憎みながらも、切り離すことのできない冬希にとって、「関わりたくない人と関わらずに」生きている日都子の強さはまぶしく映ったのかもしれない。

ひとりを選んだ日都子の孤独が、冬希のだれとも分かち合えない痛みの孤独を引き寄せたのだろう。ひとりを選ぶのも、寂しいことばかりじゃない。

チェーンの外れた自転車と冬希を置き去りにして、立ち去ろうとする日都子の自転車の荷台を冬希が思わず掴んじゃうシーンが、青春全開でお気に入り(*’ω’*)

ブックデータ(受賞歴など)

BOOKS雨だれ 第16回小学館文庫小説賞受賞

BOOKS雨だれ 第22回松本清張賞受賞

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