和田秀樹『受験のシンデレラ』~お前、東大に行かないのか?

和田秀樹『受験のシンデレラ』
  • BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊!
  • 受験生の勉強の息抜きとヒントに
  • 受験のカリスマ和田秀樹・初の小説

和田秀樹の受験ノウハウが詰まった小説

「勉強のやる気が出ない」という中学生・高校生におすすめしたい本が和田秀樹さんの『受験のシンデレラ』。受験勉強は孤独な自分との戦いだ。勉強しているのに成績が伸びない…、頑張ったってどうせムダ…とあきらめそうな人は、ぜひこの小説を読んでほしい。

この小説には受験勉強を乗り切るためのヒントがちりばめられている。この本のおすすめポイントは3つ。
①ゼロからはじめる受験勉強がわかる
②和田秀樹の受験ノウハウがつまっている
③読み終わった後やる気がでてくる

①ゼロからはじめる受験勉強

この小説に登場する遠藤真紀は、家庭の事情で高校を中退した女の子。いまは工場のアルバイトをしながら母とふたりでくらしている。真紀の母親は売れない洋品店をしながら、娘のバイト代を当てにするような生活をしている。つまり、母親の経済能力はゼロ。さらに悪いことに、真紀は男運も悪い。
付き合っている彼氏に結婚するための資金としてお金を渡したものの、彼には真紀と結婚する気はさらさらなくて、つまり騙されてしまう。

お金はない!彼氏に捨てられる!人生のどん底に落ちた真紀にひょんな出会いが訪れる。見ず知らずの五十嵐という男から突然「東京大学合格を目指して勉強してみないか」と誘われるのだ。

五十嵐は、東大合格率9割を誇る学習塾「ミチター・ゼミナール」の経営者である。五十嵐は彼自身が抱えているとある事情から、この少女を東京大学に合格させようと誓う。とはいえ、真紀の学力は中学生でも怪しいレベルである。大学受験なんて無理、と言いたくなるが…。

②東大合格のための受験ノウハウ小説

この小説はただのシンデレラストーリーではない。この小説の著者・和田秀樹さんは、精神科医であり、数多くの受験ノウハウ本も出版している受験アドバイザーであり、現役東大生による完全個別指導の通信教育を実践する緑鐵受験指導ゼミナールの代表も務めている。百ます計算を広めたり、基本的な生活習慣の定着を唱えた”陰山メソッド”で知られる陰山英男先生も次女の受験の際に東大受験ならココ!と緑鐵受験指導ゼミナールへ入会させている東大受験では有名なゼミである(らしい)。
そんな和田秀樹さんが、2008年に東大受験のためのノウハウをつめこんだ映画を製作した。タイトルは「受験のシンデレラ」。小説版『受験のシンデレラ』は、映画の中で伝えきれなかった受験テクニックやノウハウをストーリーに絡めながら書き下ろしたもの。この映画ノベライズが、和田秀樹さんの初の小説作品になる。

東大受験を要領よく受験をこなすためのポイントが随所に散りばめられていて、受験生なら早速実践して自分の可能性を試してみたいと思うはず。

③勉強にやる気が出る

勉強にも受験にも興味のない高校中退者が、東大合格を目指す。
そんなのいくらがんばったって無理だろう、と思う。

偏差値40の学年一のビリギャルが慶應を目指すよりも、ハードルは高い。マリアナ海溝からエベレストに登るものだ。普通に考えたら海抜ゼロメートル地点までも遠い。海から這い上がれない。
この世には、起こせる奇跡と、いくらがんばったってなんともできない奇跡がある。

しかし、努力次第でなんとかできる奇跡を起こすのが「一流」と言われる人たち。

物語に登場する五十嵐の経営するミチター・ゼミナールは東大合格率9割を誇る。一流の「東大受験のカリスマ」である五十嵐は、箸にも棒にもかからないレベルの学力でなければ、東大合格の可否を決めるのは「希望」だという。東大入試だって資格試験のようなもの。合格できるという希望を持ち、やるべきことをやれば、必ず合格できる。落ちこぼれ高校から東大合格を目指す漫画『ドラゴン桜』でも、似たようなことが書かれていたと思う。

真紀は99円ショップで夕食のおかずを買う。
豚の細切れ肉とキャベツと大好物のキクラゲを買おうとしたところ、297円に消費税が14円(当時は消費税5%でした)、合計で311円になった。
しかし、財布の中には310円しかない。
「1円まけて」と頼むが、店長は首を横にふる。さて、あなたならどうする?

「それじゃあ、キクラゲをあきらめます」という人がほとんどだと思うけど、真紀は大好物のキクラゲをあきらめるなんてことはできない性格。

真紀は知恵を絞り、99円の商品をひとつづつ購入することにする。

99円の消費税は端数切捨てで4円。
1点の合計は103円。
これを3点購入すると合計で309円。
まとめて購入する場合に比べて2円もお得になる。

いつもこればっかりやっちゃうとお店の人に嫌われるだろうけど。

ストリート・チルドレンの子どもたちは、学校に行かなくても瞬時に暗算をこなすような計算能力の高さを身に付けるというが、『国を救った数学少女』のノンベコのように、真紀も生きていくために自然と身に付けた数学センスとたくましさがある。五十嵐は、そこに真紀の東大合格の希望を見つける。

五十嵐の学習塾のネーミングである「ミチター」とは、ロシア語で「希望」を意味する。自分はできる!大丈夫!という希望を持って、「がんばってみたい!」という気持ちがわいてくる。

あらすじ

ここにひとりの学習塾経営者がいる。名前は、五十嵐透(とおる)。彼は東大合格率9割を誇る学習塾ミチター・ゼミナールを経営する一流の「受験のカリスマ」。

ここにひとりの少女がいる。名前は遠藤真紀。
家庭の事情で、高校を中退し、アルバイトをしながら、働かない母と生活保護で暮らしている。生きるための計算能力は高いようだが、このままではいつまでたっても生活能力は改善されない。それどころか「悪い男に引っかかる」という落とし穴が待ち受けている。

さて、受験のカリスマ・五十嵐もまた、逃れられない運命の中に落とされていた。
癌で、余命一年半の宣告を受けるのだ。
こうなったらとことん落ちぶれてやれ~と自暴自棄となった五十嵐と真紀のふたりがひょんなことで出会ってしまう。

放っておけばこのまま格差社会から這い上がれないであろう真紀に充実した人生を送らせたい!それこそが自分の使命ではないか。
「お前、東大行かないか?」
東大に入れば、真紀の人生は大きく変えられる。

「勉強は、素質じゃなしにやり方だ。
運命だって、希望とやり方で変えられるんだ」


東大どころか勉強にも興味のない真紀だが、五十嵐のもつ受験テクニックで東京大学に合格させることができるのか!?

受験というとどうにも気持ちが重くなる、なんていう人もいると思いますが、こちらはコミカルでテンポの良いストーリーで、楽しみながら読めるのでは。

映画・ドラマ「受験のシンデレラ」

■映画「受験のシンデレラ」■

2008年劇場公開。
監督:和田秀樹
出演:豊原功輔、寺島咲

■ドラマ「受験のシンデレラ」■

2016年7月BSプレミアムにてドラマ化放送
出演:小泉幸太郎、川口春奈

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高校を中退した主人公の真紀が五十嵐の教えにそって勉強を続けたことで、見事受験に成功する姿から、学ぶことも多いですよね。受験はノウハウとやる気と希望!

『受験のシンデレラ』がおもしろかった人にはこちらの本もおすすめです。


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