吉田修一さんの痛快エンターテイメント
爽快復讐エンターテイメント
赤ちゃんを抱えて長崎から夫を探しに来た美月、博多から東京のホストクラブにやってきたもののすぐにやめた朋生、韓国クラブ『蘭』でボーイをしている純平。
この頼りない登場人物たちが絡み合ったら、絶対ヤバい事件に巻き込まれるでしょう。いったいどこで泥沼にハマっちゃうわけ?と不安にさせて、気がつくとなんかうまいこととんとんと物事が運んでいる感じは、猿蟹合戦というより、わらしべ長者のよう。
勧善懲悪の本質を問わせるスタイルは、吉田さん作品に共通のテーマでしょうか。では、本作における「悪」とは何だろう?と考えてみるが、どうも「コレ」と浮かばない。(悪事はちょいちょい登場しますが、断言するには弱いのよね)
ただ、この小さい悪がなければこの人たちの成長はなかったかもしれないと考えると、悪の要素って、人生をうまく渡っていくのに、実は必要なものなのかもしれない。悪を懲らしめたり、乗っかったりしながら、世の中ってうまく渡れるようになってるのかもしれないですね。
ぐいぐいと引き込むストーリーは健在ですが、もやっと感はありません。伊坂幸太郎さんのミステリーのような大衆ウケのよいテンポの良さがあります。「これにて一件落着」といった爽快感。
ドラマ「平成猿蟹合戦図」
2014年WOWOW・ドラマWにて連続放送
【監督】行定勲
【出演】鈴木京香、高良健吾、萩原聖人ほか
ブックデータ
文庫: 544ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2014/3/7)
発売日: 2014/3/7

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