平和のバトンをつないで―広島と長崎の二重被爆者・山口彊さんからの伝言

平和のバトンをつないで

単行本: 141ページ
出版社: WAVE出版
ISBN-13: 978-4872909623
発売日: 2014/07

  • 小学校高学年から中学生におすすめの本
  • 原爆と戦争を知るノンフィクション
  • 読書感想文にもおすすめしたい本

広島と長崎で二度被爆をした人たち

みなさんは、二重被爆という言葉を知っているだろうか?

1945年8月、日本にふたつの原子爆弾が落とされた。ひとつは8月6日広島に、もうひとつは8月9日長崎に。すさまじい破壊力を持つこの爆弾は、町を一瞬にして吹き飛ばし、合わせて20万人以上の人が亡くなった。この時、広島と長崎のふたつの町で、二度被爆した人がいる。

この本で語られる山口さんも二重被爆を経験したひとりだ。

8月9日、広島を訪れていた山口さんは、原爆投下に遭遇し大やけどを負った。目を覆いたくなるようなひさんな光景がそこにあった。

不安を抱えながら少しでも早くと、山口さんは怪我をした体でなんとか長崎に戻りつく。その長崎の町にも、原爆が投下された。この時のことを山口さんは「きのこ雲に追いかけられている」と感じたと語る。

ほんの数日のあいだに、離れたふたつの町で、二度も原爆投下に遭遇する。そんなことって本当にあるのだろうか!?この恐怖に、私の想像は追いつかない。

山口さんのように、二重被爆を経験した人は、ほかにもいる。しかし、日本ではその事実は長いこと知られてこなかった。

それは、二重被爆を経験した人たちがあまり多くを語らなかったからでもある。長いこと二重被爆のことを語ることはなかった山口さんだったが、二度と核による被害をもたらしてはいけないと、90歳で語り部となった。

原子爆弾の与える影響は、その時ばかりのものではなく、後世に残される人たちの心にも大きな影を落とす。

当事者の方たちの心の中には、戦争を語りたくない思いと、後世のために伝えなければという思いの大きな葛藤がある。体験を語るということそのものにも、強い意志が必要なのだということにも気づかされる。

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『きのこ雲に追われて』は、日本ではあまり知られていなかった二重被爆について、取材をもとにアメリカで出版されたノンフィクション。山口さんの体験は、こちらの本にも書かれています。ぜひ、合わせて読んでみてください。