重松清『きよしこ』〜少年はひとりぼっちだった

重松清「きよしこ」表紙とPOP
  • 中学生に読んで欲しい重松清
  • 言葉がうまく伝わらない少年の物語
  • 心にじんわりと響く本

少年はひとりぼっちだった。

思ったことをなんでも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っているから、きよしこに会いたかった。(本文より)

本の紹介

少年はいつも言いたいことが言えなかった。

言葉がつっかえてしまうのだ。無理をしてしゃべろうとすると、言葉の最初の音がつっかえてしまう。

吃音(きつおん)。
どもる、とも言う。

きよしは、そんな少年だった。

お父さんの仕事で転校が多かったが、「キ」がうまく話せないから自己紹介が嫌いだった。少年はいつも、思ったことを言葉でうまく伝えられなかった。

友だちにも、家族にも・・・。

クリスマスプレゼントに本当は欲しかった「魚雷戦ゲーム」の「ぎょ」がうまく言えない。「こっち」の「こ」も言えない。かといって、黙ってこれだと指をさすのも悔しいのだ。そんな年頃だ。

言いたい言葉をうまく伝えられない少年は、その分、じっくりと考えて本当に伝えたいことだけを言葉にする。

うまく話せないことは悲しいことじゃない。うまく話せるみんなだって、さみしさやくやしさを抱えていることを少年は少しづつ知っていく。さびしくてくやしい思いと隣り合わせの中、だれかと心通わせながら少しづつ成長していく少年の物語。

吃音(きつおん)とは?

吃音って知ってますか?
言葉がつっかえて、うまくしゃべれないことです。

この物語は、吃音に悩む少年の母親から著者に手紙が届く、というプロローグから始まります。重松さん自身、少年期に吃音症(どもりが)があり、カ行の発音がうまくなかったそうです。そのため、話すときにはカ行から始まる言葉をできるだけ避けたり、清という自分の名前についても、発音するのに苦労していたそう。

自伝的小説というのとは、少し違うのかもしれないけれど、吃音に悩み「ひとりぼっち」を感じていた少年の心は、重松さんに重なるんじゃないかな。涙必至なので、人前で読まないことをおすすめします。

ブックデータ

*もくじ*
きよしこ/乗り換え案内/どんぐりのココロ/北風のぴゅう太/ゲルマ/交差点/東京
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国語入試問題に出た本

重松清さんは国語入試問題によく出るされる作家さんですが、『きよしこ』からも出典されています。
【2016年】穎明館中学校

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。
出版社勤務を経て、1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。学校を舞台に10代の心情を描いた小説も多く、多くの作品が映画化やドラマ化されベストセラーを生み出している。国語入試問題によく出典される作家としても、10代にお薦めしたい作家。
【主な受賞歴】
『ナイフ』坪田丈二郎文学賞受賞
『エイジ』山本周五郎賞受賞
『ビタミンF』直木賞
『十字架』吉川英治文学賞

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