雷鈞『黄(コウ)』~自分はいったい何者なのか

これはミステリーであるとともに、ひとりの青年のアイデンティティ物語だ。自分はいったい何者なのか。だれもが抱く疑問だが、その答えは簡単には手に入らないものなのだ。

暴力的な方法で誤りを正すのは、自分が自分ではないことをむりやり受け入れさせるのと同じで、精神の病に発展することが往々にしてある。永遠にその秘密を守る以外に、もう一つ方法があるーそれは、きみ自身が秘密を推理することだよ。

ここでは自分で手に入れたものだけが、自分のものになる。

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中国文明のルーツ黄土高原へ

ベンヤミン(阿大)は中国の孤児院で育ち、いまは裕福なドイツ人夫婦の養子として暮らしている。遺伝性の病気で生まれつきの盲目であるが、日々の暮らしに大きな不自由はない。

ある日、中国・黄土高原の小さな村で世間を騒がす事件が起こる。六歳の少年・小光が何者かによって両目をくり抜かれるという残忍なものだった。 突然に視力を失った幼い少年に会うため、ベンヤミンはインターポール捜査員・温幼蝶とともに中国へ向かう。いったいだれがどんな目的でこんな事件を起こしたのか?中国文明の歴史を感じさせる黄土の村で”男児眼球摘出事件”の謎に迫るベンヤミンは、そこで意外な真相につきあたる。

レビュー

盲目であるということは必ずしもハンディキャップではないらしい。ベンヤミンは確かに見えないが、彼は見えるもの以上に繊細に情景を描く。足の裏に感じる小石や砂利のでこぼこ、舞い上がる土ぼこりをのせた風、熱い大豆の匂い。文章の隅々に見えない人の細やかさや柔らかさを感じる。

男児眼球事件の真相を解明する現在と孤児院で育ったこれまでの過去を流れるように行ったり来たりして物語は進む。ひつとの章のおわりの一文の中に置いたキーワードを、次の章のはじまりの一文の中に含むことで、読み手は現在から過去、そして過去から未来へと自然に時間を飛び越えることができる。

自分はいったい何者なのか。知りたいと思う時、答えは自ずと見えてくるはず。読み終えたあと、あなたもきっと黒と黄色の表紙の鮮やかさと絶妙さにしばし見惚れるはず。

受賞歴など

第四回 噶瑪(かば)蘭(らん)・島田荘司推理小説賞を受賞

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黄
文藝春秋

タイトル:黄(コウ)
著者:雷 鈞
翻訳:稲村 文吾
出版社 : 文藝春秋 (2019/7/24)
発売日 : 2019/7/24
言語: : 日本語
単行本 : 284ページ

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ゆう

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