角田光代『三面記事小説』

角田光代「三面記事小説」表紙とPOP

日刊新聞の紙面において、政治・経済で飾る一・二面に対し、社会面は三面記事と呼ばれる。三面記事では、私たちの日常の中で起こった事件やトラブルが取り上げられ、ワイドショーで話題にされるようなゴシップ記事も含まれる。

「まぁ、大変」「なんて痛ましい……」といった感想を述べながらも、多くの人はこうした事件が他人事であることにほっとする。

わたしもたぶん、そうしたひとりだ。

他人事だからこそ、新聞記事の堅苦しい文章からは読み取れない、事件の深層に興味を惹かれるのだろう。

角田光代さんが描く『三面記事小説』は、三面記事に掲載された6つの事件をモチーフに、背景を深読みし物語に仕立てた短編集。

床下から発見される女子の遺体、20歳以上も歳の離れた男子高校生を飼いならす主婦、給食に毒物を混入させた女子中学生。

特に印象的だったのは「赤い筆箱」

モチーフとなった事件もとても衝撃的で記憶に残っている。

早朝、悲鳴を聞きつけて駆けつけた長女は、勉強していたはずの妹が血を流し倒れているを発見した。不明な点も多く謎めいた事件だったが、物語ではナーバスな姉妹の関係が生々しいほど丁寧に描かれ、物語と事実の線引きができずにずるずると物語に引き込まれた。

愛憎、欲望、苦痛、憐憫……フィクションならば、どれもよくできた物語だが、この非日常がだれかの日常であったことに心がざわめく。

現実は物語を読み終えた時のように、すっきりとはしないし、感想なんて言えないな。

もくじと事件

ここで取り上げられている事件はどれも、当時、大きな話題となり、社会に衝撃を与えた事件です。以下、もくじタイトルとモチーフとなった事件

愛の巣…26年前に殺害男が自白区画整理で発覚恐れ元床下から遺体

ゆうべの花火…不倫相手の妻の殺害を依頼警察に相談32歳女逮捕、闇サイト

彼方の城…16歳男子高生にみだらな行為、38歳女逮捕

永遠の花園…担任の給食に薬物混ぜる女子中学生徒2人

赤い筆箱…中1女子殺される自室で勉強中男が押し入り

光の川…介護疲れで母殺害容疑

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