小さく愛おしい少女たちとポチ子の日々~小川洋子『ミーナの行進』

小川洋子『ミーナの行進』
  • 兵庫県・芦屋市が舞台なにげない日常をつづる物語
  • 寺田順三さんのイラストがキュート
  • 谷崎潤一郎賞受賞

朋子とミーナとポチ子の愛しい日々

父を亡くし、母は女手ひとつで娘を育てるために、一年間、東京の専門学校へいく決心をしました。娘は、芦屋に暮らす妹夫婦の元へ預けられることになりました。

これは、小説のプロローグ。
一年間、芦屋の叔母夫婦の元で暮らすことになった朋子と、叔母夫婦の一人娘、喘息もちで美しい少女ミーナ。バレーボールに熱狂し、本を愛し、恋をする、ふたりの少女の物語です。

なにげない日常がとても愛おしく描かれています。
芦屋に暮らす社長一家だし、お手伝いさん付きだし、おばあさんはロシア人だし、ペットはカバのポチ子だし。
とても私の暮らしなんかとは結びつかないようなのだけれど、それなのに、私と同じ日常がそこにある。そのことにほっとする。

寺田順三さんの描くレトロなイラストのなんとかわいらしいこと。
水色や赤や黄色のくすんだ色合い。
ローザおばあさんのスカートの、図書館のステンドグラスの、マッチ箱に描かれたカバの(これはポチ子ではないのかしら)花柄模様。絵本のようなぜいたくさも味わえます。

小説を読み終えて、またページをめくる。
いくつも描かれたマッチ箱のひとつひとつから物語が見えてきそうなファンタジックさがあった。

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ペーパーバック: 348ページ
出版社: 中央公論新社
ISBN-13: 978-4122051584
発売日: 2009/6/1

 東京書籍中学3年生国語教科書で紹介されている本

著者・小川洋子

1962年生まれ、岡山県出身。
1988年『揚羽蝶が壊れる時』で海燕新人文学賞でデビュー。1991年に『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞。これまでに多くの作品が芥川賞、直木賞、本屋大賞などにノミネートされている日本を代表する女流作家。
*受賞歴*
 第42回(2006年) 谷崎潤一郎賞受賞
↑ちょっと意外な谷崎潤一郎賞

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