辻太一朗『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』~いま学生に求められている力とは?

『なぜ日本の大学生は、世界で一番勉強しないのか?』
  • 高校生・大学生に読んで欲しい本
  • 仕事・働くということについて考える

新卒一括採用の廃止とグローバル化

「日本の大学生は勉強しない」

そんな声が上がっている。

事実、アンケートによると日本の大学生の一週間の勉強時間は小学生以下だという統計も出ている。勉強しない日本の大学生に見切りをつけている企業もある。2016年、ヤフーは新卒の一般採用を廃止した。代わりに、新卒や既卒、第二新卒など経歴に関わらず30歳以下の方を対象とした「ポテンシャル採用」をはじめている。

近年、新卒一括採用を廃止した企業は増えている。「ポテンシャル採用」のほかに「通年採用」を取り入れている企業もある。募集対象を30歳くらいまでの若年層とし採用時期を限定しないことで、会社にとっては人材の幅が広がるというメリットがある。一方で、新卒者にとっては就職活動がますます厳しくなる状況にある。

さらに就活はいまグローバル化している。特に大手の企業は、世界で戦える人材を求めている。企業の募集対象は国内の大学生に限らない。

「日本の大学生が勉強しない」と言われる中、採用枠をやる気と経験のある若年層やしっかりと勉強してきた外国人留学生など即戦力となる人材に広げる企業が増えてくるのは当然かもしれない。

日本の大学生は勉強しないのか

この本は、海外の学生さんと比べて日本の学生の勉強しなさ加減をわかりやすくやんわりと嘆きつつ、どうすれば大学生がきちんと勉強をして仕事で使える人材となるか、その道しるべを記している。

著者はNPO法人「大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(略してDSS)」を設立。意欲的に活動を行っている。

やんわりとした文章だが、要約すると「日本の大学生って仕事就いたらあんまり使えないよ~」という厳しい内容が書かれている。企業によっては、国内採用よりも海外採用人数が大幅に上回っている会社もあるというのだから、本当に日本の学生はうかうかしていられない。

第1章では、「日本の大学生は本当に勉強しないのか?」その実態が暴かれる。データ通りならば、日本の未来は暗い。やる気のある人は、海外の大学に行ったほうがいいかもしれないと本気で考えたくなる。
だが、ちょっと待って。

日本の大学生は、決して知的能力において劣っているわけではない、と著者は言う。日本の大学生に必要なのは、生きていく力、すなわち「考える力」であるらしい。そのためにはどうしたらよいのか、ということについても書かれている。

「考える力」を伸ばす授業を行っている大学データも掲載されていて、どうやら海外に留学しなくても、国内にもきちんと教育を行ってくれるいい大学もたくさんありそうである。
ほっ。(だいぶ偏差値もお高くなりますけどね)

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単行本: 236ページ
出版社: 東洋経済新報社
発売日: 2013/3/1

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