『Re-bornはじまりの一歩』~新しい自分へエールを送るアンソロジー

『re-bornはじまりの一歩』
  • 中学生から高校生におすすめ
  • 青春アンソロジー
  • 通学や朝読書にもおすすめ

新しい自分へエールを送るアンソロジー

少し違う自分になりたい。もう少しだけがんばりたい。そんなあなたの背中をちょっと押してくれるようなアンソロジー。

「新しい自分を目覚めさせる」って文字にするほど簡単じゃない。
新しいことを始めれば新しい自分になれるかっていうと、必ずしもそういうわけではなくて、むしろ、予期しない出来事との出会いが、人を成長させたり、それまで気付かなかったことに目を向けさせさせたりする。
この本のタイトルを拝借すれば、「生まれ変わった」なんて表現をしたりすることもあるけれど、違う自分がどこかから湧いてくるわけじゃなくて、それまで見えていなかった自分の幅が広がったということだと思うんだよね。

気に入った作品は、「あの日の二十メートル」
克彦は、大学生だ。すべり止めで受けたその大学には6月から通っていないが、屋内市民プールには毎日通って泳いでいる。ある日、プールで出会ったおじいさんに泳ぎのコツを教えたところから、おじいさんに泳ぎをおしえることになった……。2011年度高校入試出典作品(岡山)。
「会ったことがない女」
自分の人生も終盤に差しかかり、唐津はひとつの気がかりを抱えていた。50年以上前に出会った「ハル」という女のことだ。といっても、その女は当時ある女に取り憑いていた明治生まれの霊なのだが……。
どちらも、名前を聞いたのもはじめての作家さんでしたが、読みやすく、あっさりしている割には、好きな文体。こういう、はじめての作家さんとどんどん出会えちゃうのがアンソロジーのいいところですよね。
このアンソロジーに出てくるどの主人公たちも、なんだか煮え切らない日々を送っていて―それを変えたいとかどうという意識はまた別のお話なのだけど―、ふとしたきっかけがあり、気付くと物語の終わりには「なんかちょっと前とは違う自分になってない?くらいの、プラスのマイナーチェンジをしている。

違う自分を見つけ出したいと思うとき、必要なのは努力や改善のようなものじゃなくて、この”予期しない出来事”をどううまくつかまえるかなのではないかって気がした。

じっとしていても向こうから転がり込んでくることもあるけれど、この”予期しない出来事”をつかまえるにはたぶんいろんなところに足を踏み入れて見た方がより確率は高いはず。新しい自分を見つけるチャンスは、きっとあちこちに転がってる。

あなたの始まりの一歩につながる作品があるといいな。

本をチェックする

福田栄一「あの日の二十メートル」が、2011年度岡山県公立高校入試問題に出典されました。

*もくじ*

宮下奈都「よろこびの歌」
福田栄一「あの日の二十メートル」
瀬尾まいこ「ゴーストライター」
中島京子「コワリョーフの鼻」
平山瑞穂「会ったことがない女」
豊島ミホ「瞬間、金色」
伊坂幸太郎「残り全部バケーション」

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