池井戸潤『陸王』~足袋が陸上を変える 新たなる挑戦

みんなは「足袋」を知っているだろうか。10代の中には「見たことはある」とか「知っている」けれど、履いたことがあるという人は多くないかもしれない。和装が日常着だったころなら知らない人なんていなかっただろうけれど、現在では着物を着る機会はうんと少なくなって、七五三や成人式など特別な時だけ。お祭りで足袋を履いたことがあるという人もいるかもしれない。

もちろん、足袋は日本人にとって後世に残したい大事なもののひとつではある。
でも、必要としている人はうんと減少しているというのが現実。

『陸王』は、消えつつある足袋とともに会社を復活させようとする人たちの物語。

足袋と会社の復活物語

こはぜ屋は行田市で100年続く老舗の足袋屋である。創業は1913年。第一次世界大戦前後にまでさかのぼる。かつて行田は、日本で生産される足袋の八割を生産する「足袋の町」だったが、業者は減少の一途、いまは数えるほどしかない。足袋の需要はとっくに底ばいだが、会社はなんとかしぶとく生き残っている。

時代の変遷とともに、成長する会社もあれば時代と共に消えていく仕事もある。時代は和装から洋装へと移り変わり、地下足袋も安全靴にとって代わられている。足袋そのものがなくなることはないだろうが、もはや絶滅危惧種である。会社も古いがミシンも百年選手、従業員の平均年齢は57歳。こはぜ屋の社長・宮澤は、会社を自分の代で終わりだと覚悟を決めている。

こはぜ屋の息子・大地もまた壁にぶつかっていた。就職活動がうまくいかず、仕事が見つかるまで家業のこはぜ屋で働いている。

ある日、営業先のデパートで奇妙な形のランニングシューズを見つける。五本指のついた足袋に似たそのシューズとの出会いに希望を見出したこはぜ屋は、新しい挑戦へと駆り立てられる‼

小さな会社が新しい挑戦で大手企業に立ち向かう!銀行に融資を渋られ、ブランドメーカーに邪魔されても、あきらめずにまっすぐに戦い続ける姿勢に応援せずにいられない。期待を裏切らないどんでんがえしの結末に、すっきり清々しい読後感が味わえます。池井戸さんの小説はドラマ化されている作品も多く、どの小説もおすすめですが、シューズメーカーのストーリーということで、スポーツをしている人やスポーツ好きな人には身近で楽しめる題材なので、10代にもおすすめ!

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