宮下奈都『よろこびの歌』

いま自分がいるここは、自分が本当にいるべき場所じゃない。ここで自分が何をしたらいいのかわからない。そんな風に思うあなたに読んでみて欲しいのが、宮下奈都さんの『よろこびの歌』。とある新設女子高に集まってきた少女たちの物語です。

よろこびの歌

御木元玲(みきもとれい)は、世界的に知られるヴァイオリニスト・御木元響の娘である。周囲からも当然合格すると期待されていた音大附属高校の入試に失敗した玲は、音楽科のない普通科の新設校への入学を決めた。自分にあると思っていた音楽の才能を否定されたようで、それは自分の存在を否定されたのと同じだった。高校生活に一切期待をせず、周りの子たちとの間に幕を張ったような毎日を送る玲。孤独なのではない、ひとりを選んだのだ。母や音楽へのコンプレックスとのはざまで漂っていた玲だったが、2年生になり合唱コンクールの指揮者をすることになるのだが…。

この物語に出てくる”彼女たち”は、みんなと同じふつうの女子高生たち。何者かになりたくて、コンプレックスを抱き、でも簡単には変われことを知っているから、くすぶりながらも受け入れたふりをして日々をやり過ごしている。でも、「自分にはなにもない」「才能がない」なんてだれが決めたの?彼女たちは合唱コンクールをきっかけに生まれた関わりは、彼女たちを近づけ、心に変化を与えていく。
だれかに決められた自分を”自分”だと受け入れることはない。「ここは自分の場所ではない」と感じても、まぎれもなくあなたはそこにいる。あなたのいるその場所こそが、あなたの場所なのだ。ここでなにができるか、胸の奥に抱えた静かな反抗心の声が聞こえる。

もくじ

do よろこびの歌
re カレーうどん
mi NO.1
fa サンダーバード
so バームクーヘン
la 夏なんだな
si 千年メダル

ドレミファソラシドのメロディにのせて、季節を重ね少女たちの成長を綴った連作短編集です。気づいた人もいるかな。タイトルはすべて「ザ・ハイロウズ」の曲名からつけられています。このエピソードは、私の中の宮下さんのイメージを形づくっています。宮下さんの小説には「緩やかな」とか「穏やかな」という言葉がぴったりなのでが、心はとても熱い方なのだと思うの。

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出版社 : 実業之日本社 (2012/10/5)
発売日 : 2012/10/5
言語: : 日本語
文庫 : 272ページ

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