- 第16回ちゅうでん児童文学賞受賞。小学校高学年から中学生向けライトミステリー
- 人から人へと旅をするというペンにかくされた“物語”とは…?
赤いペンの不思議な物語
何か、物語はあるかい?
自分の物語を書かずにいられなくなるという、不思議な赤いペンのうわさ。
人から人へと旅をしながら物語を紡ぐ、そのペンの謎を追う。
それは都市伝説のようなもの。
その赤いペンを拾うと、手にペンがはりついて離れなくなり、無理やり書かせるという。ペンが勝手に何かを書き始め、疲れ果てた持ち主は病気になってしまうとか、ペンには呪いがあって手にした人は狂ってしまうとか。そのペンが赤いのは、持ち主の血を吸うからだとか。
去年あたりから町のあちこちで、そんな赤いペンのうわさがささやかれている。
夏野は、その赤いペンの話を探している。学校でも赤いペンのうわさを耳にすることはあるが、人と話すことが苦手な夏野は、直接話しかけることが出来なくて、調査は思うように進まない。
中学二年生にもなってクラスメイトに気軽に声をかけることもできない自分が情けなくもあり、自分のコミュニケーション能力の限界にへこんでいる。
そんな夏野にも心強い助っ人がいる。町の文学館にいるふたり、少し弱気だけどまじめで優しい草刈さんと押しの強いやり手のちはやさん。それから、バーすずらんのマスター、五朗さん(見た目はすらりとした美人さんだけどね)。
ひょんなことがきっかけで、クラスメイトの春山が調査に協力してくれることになった。春山は、好奇心が旺盛で、物怖じしないタイプ。ひょろりと背の高い夏野と、クラスの男子で一番背の低い春山。性格も正反対のふたりが、赤いペンを拾った人たちから物語を聞き集めていくのだが、やがてペンの物語は別の物語へとつながっていく。
どうして、夏野が赤いペンのうわさを調べようとしているのか。夏野には、赤いペンの真相を確かめたい理由があった。
少し謎めいていてファンタジックな物語。
少し謎めいた物語に引き寄せられページをめくる手が止まらず一気読み。読みやすく確かな文章の安定感があり、ドキドキしながらもじっくりと読ませてくれる。赤いペンのエピソードを集めた連作短編のような流れを想像していたところで、夏野の物語が絡みはじめたところからさらにひきこまれ、最後をしっかりとまとめてあって、さらに余韻を残してくれる。最後まで飽きずに読めるかどうかは、私のおすすめ本選びのポイントのひとつだが、満点。
中学生の女の子にすすめたら、おもしろかったみたいで一気読み。村山早紀さんの『コンビニたそがれ堂』シリーズやあまんきみこさんの『車の色は空の色』が好きな人におすすめ。
高学年から楽しめそう。男女、年齢問わず、おすすめできるとてもいい作品。久しぶりにヒットの児童文学。著者のデビュー作だというので、今後の活躍にも期待しています。
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受賞歴など
第16回ちゅうでん児童文学賞受賞
全国学校図書館協議会選定図書
単行本: 197ページ
出版社: フレーベル館
ISBN-13: 978-4577042199
発売日: 2015/2/7