『ザ・ヘイト・ユー・ギブあなたがくれた憎しみ』〜大切なのは正しい行いをやめないこと

ザ・ヘイト・ユー・ギブの本と本文より抜き出した文章「正しい行いをしていても、うまくいかないときはあるわ。大切なのは、それでも決してやめないことよ。」
  • ニューヨークタイムズベストセラーランキング1位獲得
  • 映画化でも話題の注目海外YA小説
  • 高校生の読書感想文課題図書

だれのせいでもないのに、今の自分にはどうにもできないことがある。
きっと、もとをたどればなにかきっかけはあるのだろう。
声にならなかった悲しみは、長い時間をかけてさらに悲しみを引き寄せ、やがてくっきりと強い憎しみを生み出した。差別はいけない。
言葉ではわかっていても、そのことと心を本当の意味でフラットにさせることとは別のことだ。

本の紹介とレビュー

ガーデン・ハイツに暮らす、ひとりの男の子が死んだ。
彼の名前はカリム。
ティーンの集まるパーティーで銃声が発砲される事件が起こった。カリムはそのパーティー会場から車で家に帰る途中だった。後ろからやってきたパトカーに呼び止められた直後、カリムは警官に銃で撃たれた。
いったい何が起こったのか。

カリムの死について流れる憶測まじりの報道。
それが事実とは違うことをスターはちゃんと知っていた。
あの晩、スターはカリムと一緒にいて、事件のすべてを見ていたのだから。

カリルはなにも悪いことはしていない。
制限速度を守り、無謀運転もしていない。
それなのに、白人の警官は突然銃を撃ったのだ。
なぜカリムは死ななければならなかったのか。
なぜ人々はカリムの死を当然のように受け止めるのか。
ガーデン・ハイツはギャングの町だから?
カリムがごろつきと呼ばれているから?

でもみんなは真実を知ろうともしない。

このままでいいのだろうか。

これは、ガーデン・ハイツに暮らす女子高校生・スターの物語。

ガーデン・ハイツはギャングがはびこる町。彼らは誰のものでもない”ストリート”を奪い合っている。いつ銃声が鳴り響き、ギャングの争いに巻き込まれもおかしくない毎日。この町でスターは家族と暮らしている。

スターの立場はちょっと複雑だ。家族構成は少々複雑だが、家族の仲は悪くない。どう複雑なのかというと、それは物語を読んでもらうことにして。スターは、黒人のくらすガーデン・ハイツに住み、そこから車で45分もかかる私立のウィリアムソン校に通っている。 ここでは、同じ学年で黒人はスターとライアンのふたりだけ。だから、みんなはふたりが付き合えばいいのにと思ってるみたい。そういうくだらない偏見はあちこちにあって、でもそんなことに気づかないふりをしながらなんとかやっている。

カリムの事件のこともだれにも話せずにひとりで抱えようとするスターだが、やがて事件は人々を動かし、スターの心も大きく揺れ始める…。

さて、わたしはさっき、「これはスターの物語」と書いたけれど、これはカリルの物語でもある。

16歳で命を奪われた黒人の少年。

そして、名もなき大勢のカリルたちの物語。

たぶん、わたしたちの多くは、この物語をスターの目線で読み始めるが、読み終わるころには自分がウィリアムソン校に通う”その他大勢の生徒”たちだと気づくはず。

正しい行いをしていても、うまくいかないときはあるわ。大切なのは、それでも決して正しい行いをやめないことよ。

スターが選んだ「正しい行い」とは?
物語の中でスターはいくつもの失いながら、自分が守るべき大切なものに気づきます。 それは、見えない差別に打ち勝つために一番必要なものだと思うのです。

おすすめポイント(受賞歴など)

ボストン・グローブ・ホーンブック賞受賞
ニューヨークタイムズベストセラーランキングで3か月にわたり1位を獲得
第65回青少年読書感想文全国コンクール課題図書・高等学校の部

映画化

『しあわせの隠れ場所』の製作スタッフが集結、無実の友のために立ち上がった女子高生の勇気と希望の物語。2009年カルフォルニアで起こった無抵抗の黒人青年を警官が射殺した「オスカー・グラント事件」をヒントに書かれたベストセラー小説『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』の映画化。

出演:アマンドラ・ステンバーグ, レジーナ・ホール, ラッセル・ホーンズビー, K・J・アパ, コモン
監督: ジョージ・ティルマンJr.
販売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日 2019/04/12
時間: 133 分

本をチェックする

単行本: 472ページ
出版社: 岩崎書店
発売日: 2018/3/24

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