『遣唐使物語 まなり』~遣唐使の歴史を知る井真成の伝記絵本

  • 歴史を知る絵本。これまで知られていなかった遣唐使の歴史がわかる
  • 小学校高学年から中学生にも
  • 高学年から中学生のよみきかせにも。

遣唐使は危険な航海だった

2004年の秋、中国の西安で工事現場から「墓誌」と言われ石が出土された。そこに彫られていたのは「井真成」という名前と「日本」という国号。

これは、命をかえりみず大海を渡った遣唐使と、彼らを支えた人たちの物語。

中国が「唐」だった時代。

日本がまだ「倭国」と呼ばれていたころ。

唐の制度や技術、文化を学ぶために、日本から唐へ人材を派遣した。それが遣唐使。歴史の教科書にも載っているよね。

630年に最初の遣唐使が派遣されてから、最後の838年まで、約200年の間に15回遣唐使が派遣されている。(遣唐使の回数には諸説あり、こちらの絵本では15回としている。以下、回数については絵本にそって)

遣唐使で有名な人たちと言えば、吉備真備や鑑真、最澄、空海など。彼らは唐から日本へ戻ってきたあと、国の基盤を作る上で重要な役割を果たしている。

一方、遣唐使で多くの優秀な人材や名もなきたくさんの人々が、この危険な航海に命を落とした。当時の遣唐使船は、雨嵐の激しい航海に十分に耐えられるものではなく、15回の遣唐使のうち7回は到着できなかった。としたら、遭難率はほぼ50%。なかり危険な航海だったと言える。

私だったら行きたくない。実際、渡航を命じられたが体調不良などを理由にちゃっかり辞退した者も少なくないという。

身内を送り出すものは、もしかしたらもう二度と会えないかもしれない思いで見送った。

この絵本の中ではこんな歌も添えられている

旅人の宿りせむ野に霜降らば

わが子はぐくめ天の鶴群

(万葉集巻九 遣唐使随員の母)

謎の人物・井真成

思いがけず偶然に工事現場から発見された墓誌。これは、中国で発見された最古の日本人の記録であり、また現存する石刻資料として「日本」の元号が記された最も古い記録となった。

墓誌に記された、井真成とはどんな人物なのか。

墓誌には、日本人留学生・井真成が開元22年(西暦734年)に亡くなり、その後「尚衣奉御」の官職を贈られたという記録が記されていた。

「尚衣奉御」とは、皇帝の衣服をお世話する役職である。

この絵本の中で、井真成は木綿に魅せられ、美しい色に染め上げる職人として描かれている。

真成の染める衣を「これまで見たことのない美しい色」だと声をかけた玄宗皇帝に、真成は「故郷の色」だと答えた。

そんな真成に皇帝は少しいじわるっぽくこう質問する。

「日本はそんなに美しい国か、この長安よりも」

返事に困りながらも、真成は答えた。

「はい、美しいと…」

「よい。よい。それでよいのだ。故郷が一番美しいと思う心、それが自然だ。そして尊い」

玄宗皇帝に認められた真成だが、思いがけない病気により開元22年(西暦734年)に唐で亡くなる。

真成の心に描かれていたのは、最後まで、美しい故郷・日本の景色だったに違いない。

井真成のルーツには諸説あり、その中で「葛井氏」説にゆかりのある大阪府藤井寺市では、伊真成をイメージした「まなりくん」を市の公式キャラクターとしている。

◇関連ドラマ

2005年にNHKスペシャル『新シルクロード』にて堺雅人主演でイメージドラマが放送されました。

ブックデータ

大型本
出版社: 新樹社
ISBN-13: 978-4787586063
発売日: 2010/09

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