川島誠『神様のみなしご』~人生のすべては、大人の都合である。

神様のみなしご
  • 中学生・高校生におすすめ
  • 養護施設を舞台にした物語

人生のすべては、大人の都合である。

『ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。 (14歳の世渡り術)』の中で、翻訳家の金原瑞人さんがおすすめしていたのを読んで、すぐにこの本を読みたいと思った。行きつけの図書館や近所の書店では見つけられず、ネットで購入した。できるだけ書店で本を買うように心がけている、それでも、欲しい本が簡単に見つかる手軽さと家まで届けてくれる便利さについ頼ることも少なくない。

子どもの人生のすべては、大人の都合だ。

”憤り”とか”やるせない”なんて言葉で簡単に感想を言える私は、やっぱり当事者ではないからなのだろう、とも思う。

これは、海辺の養護施設・愛生園で暮らす少年少女たちの物語。

「前にいた中学では、人殺しって呼ばれてました。父が犯罪者だからです。…ふたりを区別する必要があるときは、ぼくはBって呼ばれてました。人殺しのB。兄は人殺しA」
自分たちをそんな風に自己紹介する双子の宮本兄弟。

それを素直で無邪気に「人殺し、シュート、シュート」なんて言っちゃうのはゴウジ。

ゴウジは、小6とは思えないようなチビでやせっぽちだ。愛生園ではおいしいごはんが食べられて、おかわりもできるから幸せだって感じてる。

最年長の浅田さんは、今年中学を卒業するから園を出て働こうと思ってる。どっか、住み込みのとこでも。

こいいうのは全部、親のせいなわけよ。
ほら、結局、あれだよ。聞いたことあるだろ。こどもは親を選んで生まれてくることはできない、って。そりゃ、そうだわな。だけど、おまえも俺の親みたいなやつらに当たってみろよ。人生のデビューでだぜ。最悪。こっからね、どうやって、取り返してったらいいんだ?教えてくれよ。

本文より

いまやこれからに不安がないわけがない。だれにもぶつけられない憤りやひねくれ交じりに淡々と嘆きつつ、踏ん張って生きている彼らのまっすぐさに心を揺さぶられる。川嶋さんは、児童・YA向けの小説で重いテーマを描くときも、忖度なんてしないで直球で描くから、そこがいい。児童文学を読む大人にもおすすめしたい。

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