川嶋康男『永訣の朝~樺太に散った九人の逓信乙女』~真岡郵便局の少女たちの悲劇

『永訣の朝』
  • 中学生から読んで欲しい
  • 戦争と平和について考えるノンフィクション

戦争が終わってここからは平和になるはずだった。しかし、ここからが新しい戦いの始まりになった場所もあったことを知ってほしい。なぜ、彼女たちは犠牲にならなければならなかったのか。同じ悲しみを繰り返さないためにも考えてほしい。

 終戦後の樺太、真岡郵便局の悲劇

1945年8月15日、日本はポツダム宣言の受諾を宣言し、戦争の終結を告げた。
戦争を知らない世代の私たちも、この日を「終戦記念日」として知らない人はいないよね。もし知らなかったらいまここで覚えて帰ろうね。

戦争の終結は、戦いの終わりを意味するはずと思っている人は多いかもしれないけれど、必ずしもそうとは限らない。敗戦は負けを意味する。ここから新たな戦いが始まることもある。

戦いで奪った土地は返上することになる。自分の国が「知らない誰かの国」に早変わりする。他者と隣接している土地は、安全な場所から危険な戦場の最前線に変わる。

沖縄のひめゆりの塔では、終戦とともに捕虜として捕まることを恐れた乙女たちが自ら命を絶った。集団自害なんて言われるけど、逆らうことの許されなかったこの時代に「いざとなったら自ら命を絶つべきだ」と言われていたのだから、国からの命令以外のなにものでもない。「たとえ負けることになっても、命を絶ってはいけないよ」と前もって言われていたら、だれが自ら死を選ぶだろうか。

沖縄と同じように、北のはての町でも自ら死を選ばざるを得なかった少女たちがいた。

8月20日、終戦から5日後のこと。
樺太(現在のロシア・サハリン)にソビエト兵が上陸し、町は戦火に包まれた。多くの日本人はソビエト兵が上陸する前に船で樺太を発つ。そんな中、真岡郵便局には電話交換手として九人の乙女たちが残されていた。

彼女たちはなぜ、命を絶たねばならなかったのか。
戦争が終わったのに、なぜ、このような悲劇が起ったのか。

関係者からの取材から、彼女たちのくらしから最後の時をつづったドキュメントです。残されている記録は多くはありません。平和について考えるきっかけに、ぜひ手に取て欲しい1冊です。

ドラマ「霧の火~樺太・真岡郵便局に散った9人の乙女たち」

『永訣の朝~樺太に散った九人の逓信乙女』を参考文献として、2008年日本テレビで「霧の火~樺太・真岡郵便局に散った9人の乙女たち」がドラマ放送されました。

【キャスト】福田麻由子、白石美穂、市川由衣、向井理ほか
【主題歌】松山千春「思ひ」
平成20年度文化庁芸術祭優秀賞受賞。

本をチェックする

文庫: 244ページ
出版社: 河出書房新社
ISBN-13: 978-4309409160
発売日: 2008/8/31

小学校高学年・中学生向け編集されたジュニア版『死なないで!―一九四五年真岡郵便局「九人の乙女」』も刊行されています。
戦争を知らない子どもたちにもわかりやすく読みやすく書かれているので、普段、あまり本を読まない人にも手に取ってほしいです。

合わせて読みたい本