レシピにたくした料理人の夢―難病で火を使えない少年ー

レシピにたくした夢
  • 小学校高学年から中学生向け
  • 突然の難病にも料理人の夢を諦めなかった少年のノンフィクション
  • 障がい・福祉に興味がある人や料理が好きな人にも

あきらめなかった料理人の夢

「いつか料理人になってたくさんの人を笑顔にしたい」

それが少年の夢だった。

しかし17歳になった少年に告げられたのは、治療法がないといわれる難病だった。
昇兵は元気いっぱいでやんちゃな少年。6歳から台所に立ち、料理の手伝いをするのが好きだった。

脊髄小脳変性症という難病を抱えた母と、姉、祖父の4人暮らし。

脊髄小脳変性症とは、少しずつ体の自由が利かなくなる病気で、今のところ治療法のない難病だ。

自分の料理でみんなが笑顔になることがうれしくて、昇兵はいつしか料理人になることを夢みていた。

ところが、昇兵の成長とともに体に少しずつ異変が起こる。膝がかくんと折れることがある、言葉がうまく出にくいことがある、つまずく回数が増えてきた。

17歳・高校二年生になった時、検査をした。昇兵に告げられたのは、母と同じ病名だった。

「1リットルの涙」と同じ病気だよ。

昇兵は、こんな風に伝える。

「1リットルの涙」は、この病気を発症した中学三年生の女の子のノンフィクションで、ドラマ化もされ話題となった。

進行性で治療法はない難病。

どうして自分だけが?

お父さんがいなくて、お母さんが病気で、これまでさんざん悲しいことや辛いことを味わってきた。ほかの家のように、お母さんがお弁当を作ってくれなかったり、そういうことを全部我慢してきた。

それなのに、なんで自分までが病気にならなくてはいけないのか。

心に重くのしかかる悔しさと怒り、悲しみと絶望。

それでも大好きな料理を続けていた昇兵さんだったが、ある日、沸騰しているやかんを持ち上げようとして、大きな火傷を負ってしまう。

医者から、火を使うことを止められた。

その宣告は、病名を告げられた時と同じ衝撃で昇兵を襲った。

料理をすることで誰かの役に立ちたい。その思いは、昇兵さんにとって生きがいだったからー。

一度は、料理人になる夢をあきらめようとした昇兵が、たどりついたレシピとは。

幾度も困難や辛さを味わって、それでも前向きに進もうとする昇兵さんの強さに励まされる。彼を支える周りの人たちの強さにも。

☆「かっぺキッチン」で検索すると、昇兵さんのオリジナルレシピが見れますよ。

本をチェックする

単行本: 172ページ
出版社: 汐文社
発売日: 2016/8/20

小学校中学年から読める角川つばさ文庫もあります。

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