最果タヒ『十代に共感する奴はみんな嘘つき』

十代に共感する奴はみんな嘘つき
十代のカリスマ詩人・最果タヒがあの頃を振り返り、女子高生の”いま”を描く。

「感情はサブカル。現象はエンタメ。つまり、愛はサブカルで、セックスはエンタメ。」

かわいそうなあの子

17歳の女子高生・カズハ。

隣のクラスの沢くんに告白するが、「まあいいよ」という返事がなんだか気に入らなくて、自分からしたはずの告白を撤回する。いつも一緒にいるメンバーとは、仲がいいというわけでもなくなんとなくつるんでいるだけ。だから、沢をふったことでまわりからハブられたって痛くもない。

ある日の放課後、教室でひとり居残り掃除をしている初岡を見つけたカズハ。そこへ偶然やってきた沢。

教室の中でいつもぼっちの初岡は、まるでイジメられてる悲壮感を漂わせていて、なんだか嫌。ヘッドフォンで周りの音を遮断して自分から殻に閉じこもっているみたいにしちゃって、だからいじめられるんだと、カズハは思う。

いじめを跳ね返す強さを見せてやろうと、カズハは初岡に「自分のことをいじめていいよ」と提案するのだが…。

ラストで初岡の意外な秘密がわかり、カズハが見えていると思っていたはずの世界が崩れます。若さゆえの狭い正義感や傲慢さを突きつけられるとともに、自分自身の殻が破れ世界の広さを見た瞬間とも言えます。

正しさを持ち出すと簡単に弱者になるし、聖者になれるし、優しくて一番鋭利な言語を使えるようになるから是非ともそうしたい。言いたい。お前がいなくても世界は回るということを自分に叩きつけるようなそういう矛盾と不健康さの中で言いたかった。

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単行本: 124ページ
出版社: 文藝春秋
発売日: 2017/3/27

著者・最果タヒ

1986年、兵庫県生まれ。10代に人気、共感を得ている詩人です。

デビュー作『グッドモーニング』にて第13回中原中也賞受賞。(当時女性での最年少受賞)

最果タヒさんの詩を読んでみたい人には、人気漫画家やイラストレーターとのコラボ作品『空が分裂する』もおすすめです。

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