『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』

『こんな夜更けにバナナかよ』
  • 大宅壮一ノンフィクション賞受賞
  • 福祉・医療・障害・ボランティアについて考える
  • 大泉洋主演映画化で話題!

これは、ハンデを抱えながら懸命に生きる障害者と、それを支えるボランティアたちとの愛と感動の物語…ではない。断じて。これは彼らのごくありふれた日常の物語。

鹿野とボランティアの日々

進行性筋ジストロフィー。体の動きがままならない、ほぼ寝たきりの重度の身体障害者でありながら、独り暮らし生活を送っている鹿野靖明(40歳)と彼の生活を支えるボランティアたちの日々をつづるノンフィクション『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』。

鹿野靖明・40歳。進行性筋ジストロフィーという病気を患っている。

小学6年生の時に病名を告げられ、18歳で車いす生活、35歳の時に自発呼吸が困難になり人工呼吸器を装着。ほとんど寝たきりの生活である。

この本を読むまでは、重度の身体障害者でありながら、福祉住宅の一室で「自立生活」を送るという。彼の独り暮らし生活とは一体、どんなものなのだろうか。

二十四時間の介助が必要な鹿野氏の自立を可能にしているのが、多くのボランティアたち。 学生・主婦・看護婦…その多くは20代前半の若者たちである。そして、鹿野氏とボランティアたちをつないでいるのが、90冊にもおよぶ『介助ノート』。

介助ノートを交えながらつづられるこのノンフィクションは、鹿野とボランティアたちとのぶつかり合いとつながり合いの日々の記録ともいえる。

この本、すごい。

いや、すごいのは鹿野さんであり、それはつまりボランティアのみなさんであり。それから、障害者であるということを含めた鹿野さんそのものと向き合い、書ききった著者もすごい。とにかく、人間が丸裸にされるようなおもしろさがある。もちろん笑える話ではない。(どちらかというと、怒りやイライラが多いかも)

しかピー(ボランティアたちは鹿野をこう呼ぶこともある)は、自己主張が強く、生きることに貪欲で、とてもワガママ。だから、しばしばボランティアたちにも頭にきちゃうし、ボランティアたちも怒る。

この本のタイトルもまた、眠れない夜のしかピーの要求(欲求か?)に対するボランティアのぼやきエピソードからきている。

多くのボランティと二十四時間を共に生きる鹿野は、夜更けにバナナを食いたがり、エロビデオをレンタルしてきてもらい、恋愛をして、失恋もして、それでもめげない。

そう、彼は結婚していたこともあり、離婚歴もある。

なぜ、多くの若者が鹿野のもとにボランティアをしに集まるのか? 障害者とボランティアは「助けを必要とする人」と「助けてあげる人」などという単純な関係ではないらしい。

いい意味で、ハンディキャップのイメージをくつがえされ、ボランティアとはなにかを考えさせられます。涙の物語を期待している人はごめんなさい。むしろ、そういう人に読んでみて欲しい。

映画「こんな夜更けにバナナかよ」

【監督】前田哲

【キャスト】大泉洋、高畑充希、三浦春馬

【主題歌】ポルノグラフィティ「フラワー」

ブックデータ

第25回(2003年) 講談社ノンフィクション賞受賞

第35回(2004年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞

出版社 : 文藝春秋
発売日 : 2013/7/10
文庫 : 558ページ
ISBN-13 : 978-4167838706

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