吉野万理子『赤の他人だったら、どんなによかったか。』

赤の他人だったらどんなによかったか。
  • 小学校高学年から中学生向け
  •  「事件」が好きな人に
  •  いじめについて考える物語

わたしにも起こりうるかもしれないこと。でも、自分にこんなことが起こるかもしれないなんて、普段は考えてもいないこと。

本の紹介

風雅は中学二年生。ある日、となり町で無差別殺傷事件が起こる。犯人はまもなく捕まり、事件は解決するのだが…。はじめは、クラスのみんなと同じように事件をどこか面白がっていた風雅だったが、犯人は風雅の遠い親戚だということがわかる。しかも、その犯人には自分と同じ中学生の娘もいるのだという。夏休みが終わり、二学期最初の日、風雅のクラスに転校生がやってきて・・・。

世間は他人の集まりだと思っているが、本当にそうだろうか。お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんと、家系をさかのぼってゆくと、当然、親戚はどんどん増えていく。そうしてたどってみると、町ですれ違うだれかと、実はどこかでつながっているとしても不思議ではない。もしかしたら、全くつながりのない「赤の他人」なんて存在しないかもしれない。

ハブられているあの子は他人だから関係ないかもしれないけれど、それが「知り合い」なら?「親戚」なら?

他人事だと思うから無関心でいられることも、自分とつながりのあるだれかが抱えている問題かもしれないと思うと、放っていけないような、少なくとも、その人を追い詰めるようなことだけはしたくないと思えてくる。

みんなが、自分とどこかでつながっているかもしれないということに気づけたら、人との関わり方はもっと変わると思う。

児童向けにしてはテーマやタイトルが重く、手に取りづらい作品かもしれないが、ちょっと考えるきっかけとして。

ブックデータ

出版社: 講談社
発売日: 2015/6/30
単行本: 242ページ

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