上橋菜穂子『明日はいずこの空の下』

上橋菜穂子『明日はいずこの空の下』
  • 2017年度高校生が朝読書で読んだ本ランキング第4位!
  • 国際アンデルセン賞作家・上橋菜穂子の旅エッセイ
  • 17歳のはじめての海外旅行からアボリジニとのキャンプまで異国での心ゆさぶる旅の記録

人間を「行動する人」と「行動しない人」に分けるとしたら、上橋菜穂子さんは間違いなく前者である。『明日はいずこの旅の下』は、上橋菜穂子さんの行動力の豊かさがよく表れている。高校生のころの海外研修旅行からこれまで、 二十ヵ国以上を旅してきた上橋さんの旅をつづるエッセイ。

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作家・上橋菜穂子の原点の旅


2014年、国際アンデルセン賞作家賞を受賞した、世界が認める児童文学作家・上橋菜穂子さん。日本人の受賞はまどみちおさんに続き、ふたりめ。余談だが、2018年、角野栄子さんが3人目の受賞者となった。

上橋菜穂子さんといえば、2016年に『鹿の王』が本屋大賞を受賞し大きな注目を浴びたが、これまでに世界中の多くのこどもたちに読まれ、愛されている作品を書き続けている偉大な作家さんなのである。

上橋さんの描く物語の世界は、ハイファンタジーと呼ばれている。アジアをイメージさせる雄大な自然とそこで社会を構築し生きる人間たち。避けられない争いを繰り返し、自然とともに生きることの意味について考えさせられる。わたしたち人類がこれまでに送ってきたのであろう太古の歴史を感じさせるのは、上橋菜穂子さんのもうひとつの顔・文化人類学者としての研究が物語の背景にしかりと根付いているからだろう。

児童文学作家、研究者というと机に座って仕事をしているイメージがあるが、上橋菜穂子さんはとにかくよく動く人だということがこのエッセイを読めばわかる。彼女の研究や創作の原点には「旅」がある。

上橋菜穂子さんの作家(あるいは旅人)としての原点は、17歳の夏、高校が企画した英国研修旅行への参加からはじまる。当時、彼女が夢中になっていたものはイギリスの児童文学。

ローズマリ・サトクリフの歴史物語にどっぷりとつかっていた上橋さんは、両親に行かせてほしいとすがりついた(笑)この憧れの地への旅行で、上橋さんの行動力は爆発する。「グリーンノウの子どもたち」の舞台モデルとなったマナーハウスを見学したいと著者に手紙を書き(正しくは、英語の得意な友だちに代筆してもらい)憧れの場所で著者との対面を実現させる。なんともすごい行動力だ。
この時の大きな一歩が、旅する作家・上橋菜穂子のさいしょの第一歩である。ちなみに、この旅行で上橋さんはどうしてもバグパイプが欲しくて単独行動をとりひとり迷子にもなった。
 その後、大学で文化人類学に出会い、オーストラリアの先住民・アボリジニについて研究をすることになる。アボリジニたちとのオーストリアをまわる旅や、そこで食したカンガルーのしっぽの味、お母さんとの年に一度の海外旅行など、このエッセイには上橋さんの旅のあれこれが記されている。

とにかく上橋さんの原点は「行動」にあるが、その奥には、上橋さんのお母さんの思いが込められているように思う。
心臓に小さな問題を抱えて生まれてきた上橋さん。小さいときは体が弱かったそうだが、ご両親は一度も娘が海外へ出かけていくのを止めたことはないそう。スマホにも興味津々で、娘との年に一度の海外旅行を楽しみにしているお母さんと、上橋さんとの母娘の関係にも、心和む。

新しい世界もまた、完全なる未知の場所ではない。
同じ空でつながっている。
いま見上げた新しい空が次の空へとつづいていく。

『獣の奏者』でも『守り人』シリーズでも、私の心の底にあったのは、群れとしての人の姿でした。(本文P192)

朝読書でも読まれている本

株式会社トーハンが 朝の読書推進協議会が全国の『朝の読書』実践校(小学校、中学校、高等学校)を対象に毎年行っている『朝の読書』人気本調査によると、『明日はいずこの空の下』は2017(平成28)年度の高校生の部で第4位にランクインしました。
こうした作家さんのエッセイが朝読書のランキングに入ってくるのは珍しいこと。『鹿の王』が本屋大賞に選ばれるなど、話題の作家さんとなったことで注目されたのかもしれませんね。特に、高校時代の旅のエピソードは、同年代の高校生にはいい刺激になるはず。

エッセイ集は朝読書にもおすすめのジャンルです。本選びにまよったらぜひ!(^^)!

本をチェックする

明日は、いずこの空の下 (講談社文庫)
講談社
¥638(2019/11/29 17:24時点)

文庫: 224ページ
出版社: 講談社
ISBN-13: 978-4062937870
発売日: 2017/12/15

もくじ

駆けるシスター/ 時ありき/ ミルクをひと垂らし/ リンゴの香り/ 雛の安らぎ/ パフよ、ふり向いて/ 七月に凍える/ 尻尾の行方/ 月の光に照らされて/ 場違いな人/ 手足の先に、あったもの/ ミスター・ショザキ/ あのスカートの下には/ 根性もん/ 名付けてはいけません/ 触って、嗅いで、驚いて/ 登るか、もぐるか/ 故郷の味の遠近法/ 暑さ、寒さも/ フロンティアの光/ 世界の半分

こんな人におすすめです

中学生・高校生におすすめ
上橋菜穂子さんが好きな人
旅が好きな人、旅に憧れている人
新しいことをはじめてみたい人
将来のことが不安な人

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苦手なこと:そうじ
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