ふしぎがやってくる庭へ~梨木香歩『家守綺譚』

梨木香歩『家守綺譚』
  • 朝読書や通学のおともにもおすすめ28の短いおはなし
  • 花や草・自然が好きな人におすすめ
  • 2005年本屋大賞第3位

不思議が訪れる庭

もくじ

サルスベリ/都わすれ/ヒツジグサ/ダァリヤ/ドクダミ/カラスウリ/竹の花/白木蓮/木槿(むくげ)/ツギガネニンジン/南蛮ギセル/紅葉/葛(くず)/萩(はぎ)/ススキ/ホトトギス/野菊/ネズ/サザンカ/リュウノヒゲ/檸檬(れもん)/南天/ふきのとう/セツブンソウ/貝母(ばいも)/山椒/桜/葡萄(ぶどう)

つい百年前の物語。売れない作家の「私」=綿貫征四郎は、亡き親友・高堂の実家の家守をして暮らしている。家主が健在だったころには風情のあった池つきの庭は、今では木々が伸び放題・栄耀栄華を極め、つまりなんの手入れもせずに放置してあるためか、草木たちは自由に勢いよく伸びている。

自由にさせすぎているからであろうか、この庭に四季折々、今ではめったにお目にかかれないふしぎな生きものたちが訪れる。
河童・狸・人魚・小鬼・カワウソ…これは、ふしぎでもないか?
ボートを漕いでいる途中、湖で行方不明になったはずの友・高堂も掛け軸から現れる。

ひとつの物語がほんの数ページ。28編収められている。物語ごとに、もしゃもしゃと草木が生い茂る小さな庭に引き込まれたように、日常からしばし解放される。

この本を読むなら、眠る前か、お茶を啜り庭を眺めながらがおすすめである。

寝る前のおはなしにぴったりで、自然と眠りに誘われる。もちろん、庭を眺めながら読むのが一番しっくりくるだろうけれど、読んでいるうちにたぶん昼寝しいてしまう。そしたら、きっとこの奇譚の世界に夢ごと誘われてしまうだろうから、気をつけてね。

私たちの住むこの世界は、ほかの世界と近づき離れつつ存在しているのだ。
私には見えないけれど、たしかに、ある。

ブックデータ

受賞作ほか

 2005年本屋大賞第3位

新潮社:ピース又吉が愛してやまない20冊

著者・梨木香歩

1959年、鹿児島県生まれ。イギリスに留学し、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。愛読書はガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』

合わせて『冬虫夏草』『村田エフェンディ滞土録』もどうぞ。


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