いぬじゅん『いつか、眠りにつく日』

いぬじゅん『いつか眠りにつく日』
  • 第8回ケータイ小説大賞受賞
  • 小中学生にもおすすめライト文芸

人生は一度しかない。だから後悔のないように生きる。
しかし、死ぬ瞬間に「わが人生に悔いなし」と言い切れる人は少ないだろう。
死ぬ前にもう一度だけ、妻の手料理が食べたかった、とか。
初恋のあの人にもう一度だけ会いたかった、とか。
何かしら、この世への未練が思い浮かぶのではないだろうか。

あらすじ

高校二年生の森野蛍は、修学旅行中に起こったバスの事故で死んだ。
ある朝、長い眠りから覚めると、知らない男がやってきて蛍にそう告げた。
見知らぬ男は「案内人」だと名乗り、死んだ人間をあっちの世界へ連れてゆくのが仕事だという。そのためには、蛍の残した3つの未練を解消しなければならない。
残された時間は19日。
おっと、その前に大事なルール確認を。
その一。案内人は未練を持つ相手の名前のみ教えることができる
その二。未練は自らの力のみで解消する
その三。未練を解消するときのみ、相手の前に姿を現わせる。相手の記憶はすべて未練を解消後に消去される
その四。未練解消の期間は四十九日間とする。五十日目に未練解消が失敗した場合、この世に縛られることになる。つまり地縛霊になってしまう。

未練に関しての記憶がない蛍だが、会いたかった人たちに会い、やり残したことをしっかりやり遂げることができるのか。

おすすめポイント

第8回ケータイ小説受賞作品。
高校生の女の子が主人公ですが、中学生向け。小学校高学年からも読めます。

著者のいぬじゅんさんは、福祉サービス事業所の管理者という仕事をされています。たくさんの方の”最期”を見送る中で感じた、後悔のないように毎日を大切にしたいという思いがこの小説にこめられています。
もちろん、どんな人生にも後悔はつきものです。
後悔のない人生なんてありません。
でも、物語の中で出会った恭子が言っていたように、生きていればそんな後悔も許せる日がくるかもしれません。
生きることは、いろんな可能性を持っていると伝えてくれる優しい物語。

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文庫: 296ページ
出版社: スターツ出版
発売日: 2016/4/28

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