E.L.カニズバーグ『クローディアの秘密』

  • 家出した先は、ニューヨーク・メトロポリタン美術館!?
  • 世界中の子どもたちに愛されているロングセラー
  • ニューベリー賞ほか多数受賞!

家出先はメトロポリタン美術館

毎日が退屈なクローディアはある日家出を決意。綿密な計画を立てて家出を決行することに。選んだ先は、メトロポリタン美術館。弟・ジェイミーをパートナーに、ふたりはバイオリンケースとトランペットケースを持っていざメトロポリタン美術館に乗り込んでいく。
快適に家出生活を楽しむふたりだが、ミケランジェロにまるわるミステリーに巻き込まれ…。

弟ジェイミーを巻き込んだ、クローディアの自分探しの旅は、いつしかミケランジェロの謎を解く冒険に!!

バイオリンケースとトランペットケースをもった女の子と男の子が、どうやったら見つからずに、16世紀に作られた天蓋付きの彫刻がごてごてのベットに毎晩眠ることができたのか。考えるだけでも、スリリング。しかもこのふたり、美術館に家出中だというのに、ちゃんと歯磨きしたりお風呂に入ったりもしてるのだから、感心しちゃう。なんていい子たち!!

クローディアのペースに引き込まれちゃって、つい忘れちゃうのですが、この物語の始まりは、フランクワイヤーさんが弁護士に当てた、遺産に関する意味深な手紙。家出少女の物語がどこで資産家夫人とつながるのか、そこも読みどころ。

クローディアとフランクワイヤー夫人との、少女と元少女の会話が、この物語のキーワードになっている気がします。これがまた、なんだかオシャレなのよね~。

著者・カニズバーグ

登場人物の生き生きとした会話や子どもの目線で語られる描写のおもしろさも、もちろん、この物語の魅力ではあるけれど、何よりも強く感じるのは、あたたかさと安心感。

あとがきによると、科学者でもあったカニズバーグは一家でピクニックに出かけた時の子どもたちの様子から、この物語のヒントを得たそう。彼女にとって子どもたちは作品の一番の読者でもあり、批評家でもあったのだろう、そんな子どもたちに楽しんでもらえるようにと、子どもたちを読者として意識しながら書かれたのがよく伝わる。

わたしのお気に入り名言はこちらのふたつ

 ・計画を立てる5分間は、さがしまわる15分間に匹敵するのよ。(P208)

・幸福というのは、わき立つ感情が心の中に落ちつき場所を見つけることですが、いつもそこには小さな片すみがのこって、落ちつかずにパタパタしているものです。(P222)

思春期の女の子が家出をする不安定さを描きながらも、強く感じる、あたたかく見守られているという安心感は、母親の愛情そのものです。

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単行本: 242ページ
出版社: 岩波書店(岩波少年文庫 (050))
ISBN-13: 978-4001140507
発売日: 2000/6/16

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