湊かなえ『告白』~中学生と教師の最悪の復讐バトル

湊かなえ『告白』
  • イヤミスの女王・湊かなえのデビュー作
  • 中学生と女性教師のバトルミステリー
  • 15で映画化の話題作
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娘はこのクラスの生徒に殺されました

告白とは、だれかに秘めた思いを伝えること。
でも、こんな告白はごめんだわ。
これは、中学生と教師の最悪の復讐バトル劇である。

*もくじ*

第1章 聖職者

第2章 殉職者

第3章 慈愛者

第4章 求道者

第5章 信奉者

第6章 伝道者
中学1年生の終業式。

こんな日まで牛乳を飲まされるのは、厚生労働省から乳製品促進運動のモデル校に選ばれてしまったからだ。

最後のミルクタイムが終わると、担任の女性教諭は告げた。

「私はこの今月いっぱいで教員を辞職します」

理由はみんなも知っている。

シングルマザーとして幼い娘をひとりで育てている女性教諭は、職員会議のある水曜日だけは、放課後に娘を学校に連れてきて保健室で待たせていた。その日、娘の愛美は学校のプールで死んでいた。プールに転落した事故死と判断されたが…

「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのです」

女性教諭は、愛する娘・愛美の死の真実をあばき、さらに犯人へ復讐を告白する。

教育とはなにか、罪とはなにかを説くように、淡々と娘の死とその真相を語る女性教諭は、母親というよりも感情をそぎ落としてしまったまるで告白マシーン。女性教諭の無感情に畳みかけられる語り口と、教室という閉鎖的な空間の中で少しずつ澱み重さを増してゆく不穏な空気に息苦しくなりながらも、ページをめくる手が止められない。

「決して愉快とは言えない話を長々と続けていますが、この先もっと不愉快な話になっていきますから」

ホームルームの時間はとっくに過ぎたから帰ってもいいと言われても、この一言が犯人にはプレッシャーを与え、他の子たち(この本を読んでいる私を含めて)は、好奇心をくすぐられてもう途中では降りられない。この物語を支配しているのは、この威圧感と好奇心だ。(それは、湊かなえのミステリーに共通する)

 

女性教諭の告白はありえないラストを告げるが、その衝撃に心を整える時間も与えられず、また次の人の告白が始まる。女性教諭の復讐は、次の犠牲者を生み、解決を求めるほどに悲劇を生んでゆく。読み手を変えながら止まらずに肥大してゆく悲劇は、ここまでくるともう喜劇!まるでシェイクスピア!

やはり、どんな残忍な犯罪者に対しても、裁判は必要なのではないか、と思うのです。それは決して、犯罪者のためにではありません。裁判は、世の中の凡人を勘違いさせ、暴走させるのを食い止めるために必要だと思うのです。

 

感情を押し付けられる独白の息苦しさは、やがて、物語の結末を見届けなくてはという「もっともらしさ」にすり替わる。憎しみも愛も、好奇心も快感も、自分の中で処理しきれない感情は歪んだ正義感の後ろに上手に隠してしまえば、「社会」ではあらゆることが「アリ」になる。だからこそ、感情から切り離した「裁き」が必要なのだ。

しかし、理不尽に娘を奪われたとしたら私だって、法に頼らず制裁を加えたいと考えてしまうかもしれない。

たとえ、相手が中学生だとしても。

むしろ、法では裁けないのだから、自分でやるしかない。

そして、淡々と告げるのだ。

罪悪感を持たない自分の罪を。

ただ彼らを苦しめるためだけに。

全て壊れてしまえと、叫ぶ代わりに。

なんて、後味の悪い物語だろう。

嫌悪感に満ちたこのひねくれた小説に、衝撃と同じくらい小気味よさを感じる私もまた、物語の人物たちのように、すでに何かが麻痺していているのかもしれないけれど。

だれかに秘めた想いを伝えてみるのもいいかもね。あるいは、罪の告白を。
くれぐれも大きな喜劇を巻き起こさないようにね。

おすすめポイント

中高生に人気・湊かなえデビュー作

湊かなえさんは、中学生や中高生に人気の作家さん。人間のリアルな欲望や感情の闇を暴き出すミステリーに、若い世代は惹かれるようです。

中でも『告白』は発表から10年を経てもなお、読み続けられているベストセラー。中高生を惹きつけているのは、その衝撃的なストーリーだけではありません。

中学校を舞台に教師と生徒、親と子、生徒と生徒の軋轢が引き起こす復讐劇の背景には、子どもたちが学校生活の中で日々感じている閉鎖的空間での緊張状態が緻密に描かれています。中高生の読者は、登場人物たちの息苦しさに共感しながら、その破壊的な結末にどこか爽快感を覚えるのかもしれません。

『告白』は本屋大賞を受賞し、映画化でも大きな話題となりました。映画がR-15指定されたことで、原作を読む中学生が増えたことも原作人気につながる要因といえます。映画が観れないから読むしかない!

中高生に人気がある一方で、親が子ども読ませたくないという反応が多い作品でもあります。子どもたちがこうした小説を読みたがると眉をひそめる大人もいますが、あまり気にしすぎなくていいと思います。危ういタイプのお子さんにはおすすめしませんけど。

受賞歴ほか

・「聖職者」が小説推理新人賞受賞

・第6回本屋大賞受賞

・文春ミステリーベスト10で第1位

・オリコン文庫本ランキングで歴代1位を獲得。(文庫本発売時)

・読者1000人の「ベスト本2010」1位(丸善&ジュンク堂)

・2015年アレックス賞受賞

海外でも人気

日本でも人気のミステリー作家・湊かなえさんですが、実は海外でも人気があります。

2014年英語版『CONFESSIONS』がアメリカ・イギリスなどの英語圏で出版され、海外でも高く評価されました。

「映画『ゴーン・ガール』のようで、大きな衝撃を与える作品だ」(ロサンゼルス・タイムス)
「日本の社会の闇にスポットライトを当てている」(パブリッシャーズ・ウィークリー)

2015年には、全米図書館協会が1年に一度贈る「12歳から18歳までのヤングアダルトに特に薦めたい大人向けの本10冊」であるアレックス賞を受賞。同賞の受賞は、日本人初となりました。

映画原作

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2010年6月劇場公開。

【監督】中島哲也

【出演】

森口悠子:松たか子

寺田良輝:岡田将生

北原美月:橋本愛

下村優子:木村佳乃

第83回(2011年)アカデミー賞・外国語映画賞ノミネート

その衝撃的な結末に(結末ばかりでもないが)映画化ではR-15指定となったことでも話題に。中島監督は、映画脚本を書きあげるために、何度も繰り返し原作を読み込み、主役の森口先生は相当の技量のある女優さんでないとできないと考え、松たか子さんに依頼。

直樹の母親役の木村佳乃さん、空気を読まない新人教師・ウェルテルに岡田将生さんなど、ほかのキャストもイメージにぴったり。ほかにも能年玲奈ちゃんや、森口の娘・愛美役に芦田愛菜ちゃんも出演していますよ。

本をチェックする

文庫本では、映画監督の中島哲也氏のインタビューが掲載されています。

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